判旨
遺留分減殺請求権(現:遺留分侵害額請求権)は、時効完成の利益の放棄とは別に、権利そのものを事前に又は事後に放棄することが可能である。
問題の所在(論点)
遺留分権利者が、遺留分減殺請求権(現:遺留分侵害額請求権)について、消滅時効完成の利益の放棄ではなく、減殺請求権そのものを放棄することができるか。
規範
遺留分権利者は、相続開始後において、その有する遺留分減殺請求権(現:遺留分侵害額請求権)自体を放棄することができる。これは時効完成後の利益の放棄という構成を採るまでもなく、私法上の権利放棄の一般原則に従い、意思表示によって効力を生ずる。
重要事実
訴外Dは、遺留分を侵害する贈与等があった事案において、遺留分減殺請求権を有していた。Dは、当該減殺請求権について時効が完成する前後を問わず、当該権利を行使しない旨の意思表示(権利の放棄)を行った。上告人は、これが時効完成の利益の放棄に当たるべきものであると主張して争った。
あてはめ
原審において、訴外Dは遺留分減殺請求権につき時効完成の利益を放棄したのではなく、減殺請求権自体を放棄したものであると認定された。最高裁はこの認定を正当とし、権利そのものの放棄を認めた。権利放棄の意思表示が明確になされている以上、時効制度の枠組みを待つまでもなく、権利は消滅したものと解される。
結論
遺留分減殺請求権(現:遺留分侵害額請求権)自体の放棄は認められる。したがって、権利放棄がなされた後は、当該権利を行使することはできない。
実務上の射程
相続開始後の遺留分放棄については、家庭裁判所の許可を要する相続開始前の遺留分放棄(民法1049条1項)とは異なり、自由になし得る。本判決は、これが時効の援用放棄とは別個の独立した権利放棄として有効であることを示しており、実務上、遺産分割協議等において遺留分を主張しない旨の合意がなされた際の法的構成の根拠となる。
事件番号: 昭和25(オ)190 / 裁判年月日: 昭和29年1月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】隠居時の財産留保の意思表示は、隠居の前に確定日付ある証書でなされれば足り、隠居時までその意思が持続していると認められる限り、確定日付から隠居まで時間的間隔があっても有効である。また、財産留保が遺留分を侵害しているとの主張は抗弁であり、それを主張する側に主張・立証責任がある。 第1 事案の概要:上告…
事件番号: 昭和40(オ)1084 / 裁判年月日: 昭和41年7月14日 / 結論: 棄却
遺留分権利者の減殺請求権は形成権であると解すべきである。
事件番号: 昭和33(オ)71 / 裁判年月日: 昭和35年3月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】債務者が債権証書を保持していない場合であっても、他の証拠を総合して弁済の事実を認定できるのであれば、特段の違法はない。また、特定の事実が存在しても、当然に占有者が「所有の意思」を有していると認定されるわけではない。 第1 事案の概要:本件において、上告人は債務が既に弁済されていると主張したが、債権…
事件番号: 昭和25(オ)240 / 裁判年月日: 昭和29年1月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】時効の援用は訴訟上の防御方法としての性質を有するため、事実審である第二審の口頭弁論終結後にはこれを行うことができない。 第1 事案の概要:上告人(被告)は、特定の物件(目録記載の物件)について取得時効が成立していると主張し、上告審において初めて取得時効の援用を行った。原審(第二審)の口頭弁論終結時…
事件番号: 昭和33(オ)502 / 裁判年月日: 昭和35年7月19日 / 結論: 棄却
一 受贈者に対し減殺請求をしたときは、その後に受贈者から贈与の目的物を譲り受けた者に対してさらに減殺の請求をすることはできない。 二 受贈者から贈与の目的物を譲り受けた者に対する減殺請求権の一年の消滅時効の期間は、遺留分権利者が相続の開始と贈与のあつたことを知つた時から起算すべきである。