判旨
時効の援用は訴訟上の防御方法としての性質を有するため、事実審である第二審の口頭弁論終結後にはこれを行うことができない。
問題の所在(論点)
上告審において初めて時効を援用することが認められるか。換言すれば、時効援用の法的性質に照らし、その提出期限はいつまでか。
規範
時効の援用(民法145条)は、訴訟上の攻撃防御方法としての性質を有する。したがって、適時提出主義の観点および事実審における審理の範囲に鑑み、事実審である第二審の口頭弁論終結時までに行わなければならない。
重要事実
上告人(被告)は、特定の物件(目録記載の物件)について取得時効が成立していると主張し、上告審において初めて取得時効の援用を行った。原審(第二審)の口頭弁論終結時までに、上告人が当該物件について時効を援用した事実は記録上認められなかった。
あてはめ
本件において、上告人が取得時効を援用したのは上告理由書等を通じた上告審段階である。しかし、時効の援用は事実審における防御方法であり、事実関係の確定を伴うものである。本件記録によれば、原審の口頭弁論終結までに時効援用の意思表示がなされた形跡はなく、法律審である上告審において新たな防御方法を提出することは許されないと解される。
結論
時効の援用は第二審の口頭弁論終結までになされる必要があるため、上告審での援用は失当であり、上告は棄却される。
実務上の射程
時効の援用が「権利の行使」であると同時に「訴訟上の攻撃防御方法」であることを明示した判例である。民事訴訟法上の適時提出主義や上告審の法律審としての性格を根拠に、提出時期の限界を画する際のスタンダードな規範として機能する。
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