所有権移転登記抹消登記手続請求権の行使につきいわゆる失効の原則の適用がないとされた事例。
判旨
権利者が権利を行使しないものと信ずべき正当な事由が相手方に生じ、その後の権利行使が信義誠実の原則(民法1条2項)に反すると認められる特段の事由がある場合には、当該権利の行使は許されない。
問題の所在(論点)
権利者が長期間にわたり権利を行使しなかった場合に、その後の権利行使が民法1条2項の信義誠実の原則に抵触し、権利が失効したとみなされるための要件が問題となった。
規範
権利の行使が信義誠実の原則(民法1条2項)に照らして許されないとされるためには、単なる権利の不行使だけでなく、相手方において権利者がもはや権利を行使しないものと信ずべき正当の事由を有するに至ったこと、およびその権利行使を認めることが信義則に反すると認められる特段の事由があることを要する(いわゆる失効の原則)。
重要事実
本判決(最高裁昭和37年11月22日第一小法廷判決)の判文からは、当事者間の具体的な権利関係や紛争の経緯に関する詳細は不明である。原審において、上告人(被告)側が、被上告人(原告)の権利行使が信義則に反すると主張したが、原審はそのような特段の事由を認めず、上告人がこれを不服として上告した事案である。
あてはめ
本件において、上告人らは「被上告人が権利をもはや行使しないものと信ずべき正当の事由」があると主張したが、原審の認定した事実関係の下では、そのような事情や、権利行使を信義則違反とする「特段の事由」は認められないと判断された。最高裁も、原審の判断に誤りはないとして、上告人らの独自の主張を退けた。
結論
被上告人の権利行使を信義則違反とする特段の事由は認められず、被上告人による権利行使は適法に認められる。
実務上の射程
消滅時効期間内であっても、権利の不行使と相手方の信頼という外観が存在する場合に、権利の行使を封じる「失効の原則」を認めたリーディングケースである。答案上は、時効以外の抗弁として信義則(1条2項)を援用する際の具体的規範として、①権利不再行使の正当な信頼、②権利行使を容認できない特段の事由、の2点を明示すべきである。
事件番号: 昭和33(オ)251 / 裁判年月日: 昭和36年1月17日 / 結論: 棄却
病身の夫が家族との不和と療養の関係からさして遠方でない土地に別居中、妻が無断で夫の印章を偽造し、夫の代理名義で夫所有の土地家屋を代金三一〇万円で売却した場合、交渉の行われた場所が当該の家屋であり、家族の収入は妻名義でなす貸間収入で賄われており、成人した子供達が交渉の際同席する等、一応妻に代理権があると信じさせるような事…
事件番号: 昭和25(オ)240 / 裁判年月日: 昭和29年1月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】時効の援用は訴訟上の防御方法としての性質を有するため、事実審である第二審の口頭弁論終結後にはこれを行うことができない。 第1 事案の概要:上告人(被告)は、特定の物件(目録記載の物件)について取得時効が成立していると主張し、上告審において初めて取得時効の援用を行った。原審(第二審)の口頭弁論終結時…
事件番号: 昭和39(オ)1487 / 裁判年月日: 昭和41年9月22日 / 結論: 破棄差戻
停止条件付代物弁済契約は、弁済期日に債務不履行のあつた場合に当初の債務全額の弁済に代えて目的物の所有権を移転する趣旨と解すべきであり、債務の一部弁済があつた場合にも、その趣旨は異なるものでなく、その残債務の弁済に代えて目的物の所有権を移転する趣旨と解すべきではない。
事件番号: 昭和37(オ)396 / 裁判年月日: 昭和40年10月12日 / 結論: 棄却
第一審判決主文に民訴法第一九四条にいう明白な誤謬がある場合、控訴裁判所が控訴棄却の判決をするにあたり判決の理由中に理由を示し主文において右誤謬を更正しても違法ではない。