判旨
控訴審での訴の変更により追加された新請求については、第一審判決の当否とは無関係に実質上の初審として判断すべきであり、新請求を認容する場合でも主文で控訴棄却の判決をすることは許されない。
問題の所在(論点)
控訴審で訴の追加的変更がなされ、その新請求を認容する場合、裁判所はどのような主文を言い渡すべきか。新請求の認容を「控訴棄却」の形式で行うことの可否が問題となる。
規範
控訴審において訴の変更(追加的変更)がなされた場合、新請求は第一審判決の対象とは別個の権利であり、実質的に初審として裁判を行うものである。したがって、新請求を認容すべきと判断した場合、主文において直接その給付等を命ずるべきであり、第一審判決の当否を判断する「控訴棄却」の形式を用いることは民事訴訟法の解釈として誤りである。
重要事実
被上告人(原告)は、第一審で訴外Dの貸金債権を滞納処分として差し押さえ、Dに代位して上告人(被告)に支払を求め、認容判決を得た。上告人が控訴したところ、被上告人は控訴審において、新たに差し押さえたDの求償債権に基づく支払を求める訴の変更を行った。原審は、この訴の変更を許容した上で、求償債権に基づく新請求を認容したが、主文では「被告は支払え」と命ずることなく、一括して「控訴棄却」の判決を言い渡した。
あてはめ
原審が認容した求償債権は、第一審が判断の対象とした貸金債権とは別個の訴訟物である。控訴審で新たに主張されたこの請求については、第一審判決の正当性を審理する控訴審の本来の役割とは異なり、実質的に初審として裁判を行う性質を持つ。したがって、求償債権の存在が認められる以上、主文で「控訴人は被控訴人に対し金員を支払わなければならない」旨を直接表示すべきであり、第一審判決の維持を意味する「控訴棄却」という形式をとることは、民事訴訟法の判決形式に関する規定に違反する。
結論
控訴審で訴の変更により追加された新請求を認容する場合、主文で直接給付を命ずるべきであり、控訴棄却の判決をすることはできない。本件原判決のうち、求償債権に関する部分は破棄し、自判により支払を命ずる。
実務上の射程
控訴審における訴の変更(特に追加的変更や交換的変更)があった場合の判決主文の書き方を規律する。答案上は、訴の変更に伴う審級の利益の放棄や控訴審の構造を論ずる際、判決形式の適法性を判断する指標として用いる。交換的変更の場合、旧請求に対する一審判決は失効するため、特に主文の構成に注意が必要となる。
事件番号: 昭和29(オ)451 / 裁判年月日: 昭和33年2月25日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】控訴審において訴の変更により新たな請求が追加・置換された場合、裁判所はその新請求を認容する際、第一審判決の結果を維持する「控訴棄却」ではなく、自ら給付を命じる判決を主文で言い渡すべきである。 第1 事案の概要:被上告人(国)は、滞納処分に基づき差し押さえた貸金債権について代位請求を行い、第一審で勝…