判旨
控訴審において訴の変更により新たな請求が追加・置換された場合、裁判所はその新請求を認容する際、第一審判決の結果を維持する「控訴棄却」ではなく、自ら給付を命じる判決を主文で言い渡すべきである。
問題の所在(論点)
控訴審において訴の変更がなされ、その新請求が認められる場合に、裁判所は「控訴棄却」の形式で判決を行うことができるか。訴の変更に伴う控訴審判決の主文構成の適法性が問題となる。
規範
控訴審において訴の変更(請求の追加的または交換的変更)がなされた場合、変更後の新請求は第一審の審判対象となっていないため、第一審判決を維持する控訴棄却判決の形式をとることはできない。裁判所は、変更後の請求につき理由があると認める場合には、第一審判決のうち変更にかかる部分を取り消した上で、主文において直接、給付を命じる等の判決を言い渡すべきである。
重要事実
被上告人(国)は、滞納処分に基づき差し押さえた貸金債権について代位請求を行い、第一審で勝訴した。上告人が控訴したところ、被上告人は控訴審において、新たに差し押さえた求償債権に基づき代位請求を行うという訴の変更をした。原審(控訴審)は、この訴の変更を認めた上で、新請求(求償債権)についても理由があるとし、上告人の控訴を棄却する判決を言い渡した。
あてはめ
本件における求償債権は、第一審において主張されておらず、第一審判決の判断対象となっていない。したがって、原審が当該債権に基づく請求を認容すべきと判断した以上、第一審判決の内容を維持することを意味する「控訴棄却」を選択すべきではない。本件では、判決主文において「控訴人は被控訴人に対し金16万4510円を支払え」との給付命令を直接下すべきであったといえる。
結論
原判決のうち、訴の変更による新請求(求償債権)について控訴棄却とした部分は、判決構成として不当であり破棄を免れない。自判により、上告人に対し当該金額の支払を命じる。
実務上の射程
控訴審で訴の変更がなされた際の判決主文の書き方という実務的・形式的事項に関する射程を持つ。答案上では、訴の変更(民訴法143条・297条)が適法になされた後の処理として、控訴審の審判対象が旧請求から新請求へと移る(あるいは加わる)結果、第一審判決を単に維持する形は採れないという論理構成で用いる。
事件番号: 昭和29(オ)444 / 裁判年月日: 昭和32年2月28日 / 結論: 破棄自判
一 控訴審において訴の変更による新訴が係属した場合、新訴については、控訴裁判所は、事実上第一審としての裁判をすべきであり、たとえ新訴に対する結論が旧訴に対する第一審判決の主文の文言と合致する場合であつても、控訴棄却の裁判をすべきではない。 二 訴の変更による新訴の提起があつても、旧訴につき適法な訴の取下または請求の放棄…