原告勝訴の第一審判決に対する控訴審で予備的請求が追加された場合において、控訴審が予備的請求を認容するときは、予備的請求に対する結論が第一次請求に対する第一審判決の主文の文言と合致する場合であつても、控訴棄却の裁判をすべきではなく、第一審判決を取り消し、第一次請求を棄却したうえ、予備的請求を認容する旨の裁判をすべきである。
原告勝訴の第一審判決に対する控訴審で予備的請求が追加された場合において予備的請求を認容するときの主文の判示方法
民訴法227条,民訴法232条,民訴法384条
判旨
控訴審において予備的に追加された請求を認容する場合、第一審が認容した主位的請求と追加された予備的請求は別個の訴訟物であるため、第一審判決を維持して控訴を棄却することはできず、第一審判決を取り消した上で当該予備的請求を認容すべきである。
問題の所在(論点)
控訴審において、第一審で認容された請求(主位的請求)が理由がなく、控訴審で新たに追加された予備的請求が理由あると判断した場合、裁判所はどのような主文を言い渡すべきか。第一審判決を維持する「控訴棄却」の形式が可能か、あるいは第一審判決を取り消すべきかが問題となる。
規範
第一審で認容された請求(主位的請求)と、控訴審で新たに追加された予備的請求とは、発生原因を異にする別個の訴訟物である。したがって、控訴審において主位的請求を棄却し、かつ予備的請求を認容する場合には、第一審判決(主位的請求の認容)をそのまま維持することは論理的に不可能であり、控訴を理由ありとして第一審判決を取り消した上で、改めて予備的請求についての判決を言い渡さなければならない(民事訴訟法302条等参照)。
重要事実
被上告人(原告)は、第一審において貸金請求を行い、第一審裁判所はその請求を認容した。上告人(被告)がこれを不服として控訴したところ、被上告人は控訴審において、貸金請求が認められない場合に備え、予備的に保証債務の履行を求める請求を追加した。控訴審は、主位的請求である貸金債権の存在を否定する一方で、予備的請求である保証債務の存在を肯定したが、主文において「控訴を棄却する」旨の判決を言い渡した。
あてはめ
本件における第一審の訴訟物は貸金債権であるが、控訴審で認容された訴訟物は保証債務の履行請求権であり、両者は別個の訴訟物である。控訴審が貸金債権を否定した以上、貸金債権を認容した第一審判決は「結論において相当」とはいえず、維持することはできない。控訴審で初めて主張・認容された予備的請求は、第一審判決とは無関係な判断対象である。したがって、第一審判決を維持する控訴棄却の判決をしたことは、判決理由と主文が矛盾する(理由そご)とともに、控訴審の判決形式に関する法理を誤ったものといえる。
結論
第一審判決が認容した主位的請求を否定し、控訴審で追加された予備的請求を認める場合には、第一審判決を取り消し、主位的請求を棄却するとともに、予備的請求を認容する判決を下すべきである。
実務上の射程
訴えの予備的追加的併合が控訴審でなされた場合の処理に関する基本判例である。控訴審において第1次的請求(旧訴)が否定され、予備的請求(新訴)のみが認められる場合には、第1審判決を「取り消す」必要がある点に注意を要する。答案作成上は、訴訟物の同一性の有無から論理的に結論を導く。実務的には、不利益変更禁止の原則(民訴法304条)との関係でも意識されるが、本判決は判決形式の論理的整合性を重視している。
事件番号: 昭和29(オ)451 / 裁判年月日: 昭和33年2月25日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】控訴審において訴の変更により新たな請求が追加・置換された場合、裁判所はその新請求を認容する際、第一審判決の結果を維持する「控訴棄却」ではなく、自ら給付を命じる判決を主文で言い渡すべきである。 第1 事案の概要:被上告人(国)は、滞納処分に基づき差し押さえた貸金債権について代位請求を行い、第一審で勝…