借主の代理人との間になされた消費賃借契約による貸金返還請求を主たる請求とし、代理人に代理権がない場合には、本人が代理人を通じ、右貸金を法律上の原因なくして受領したことによる不当利得金返還請求を予備的請求として併合した訴訟において、主たる請求を排斥する裁判をするときは同時に予備的請求についても裁判をすることを要する。
請求の予備的併合において主たる請求を排斥する一部判決が許されないとされた事例。
民訴法183条,民訴法227条
判旨
予備的併合において主たる請求を排斥する場合、裁判所は同時に予備的請求についても裁判をしなければならず、これらを各別に判決することは許されない。
問題の所在(論点)
訴えの予備的併合がなされている場合において、裁判所が主たる請求を排斥する際、予備的請求について判断を示さずに主たる請求のみについて判決を下すことは許されるか。
規範
予備的併合がなされた場合、裁判所は主たる請求を認容しないときは、これと同時に予備的請求についても判断を示さなければならない。両請求を切り離して各別に判決することは許されず、一体的な審理・判断を要する。
重要事実
上告人(控訴人)は、被上告人(被控訴人)に対し、主たる請求として貸金返還請求を、予備的請求として不当利得返還請求を申し立てた。原審(控訴審)は、主たる請求である貸金請求については理由がないとして排斥したが、予備的請求については何ら判断を示さないまま、主たる請求のみを棄却する判決を言い渡した。
あてはめ
本件において、上告人は控訴審第一回口頭弁論において予備的請求を明確に主張していた。しかし、原判決は主たる請求の当否のみを判断してこれを排斥し、予備的請求に対しては何ら判断を示していない。予備的併合は両請求の審判順序に論理的関連性があるため、主たる請求を認めない以上、必然的に予備的請求の審理・判断に移行すべき義務が生じる。原審が予備的請求の裁判を欠いたことは、訴訟手続上の重大な違反であるといえる。
結論
主たる請求を排斥する裁判をする以上、同時に予備的請求についても裁判を要するため、これを行わなかった原判決は違法であり、破棄を免れない。
実務上の射程
予備的併合における裁判所の判断義務を明示した基本判例である。答案上は、裁判所が予備的請求への判断を失念した場合(判決の脱漏)や、審理の順序を誤った場合の違法性を指摘する際の根拠として活用する。分離申立てや一部判決が許されないことを論証する際にも援用される。
事件番号: 昭和36(オ)1177 / 裁判年月日: 昭和37年3月22日 / 結論: 棄却
裁判所が書証の一部を採用して事実認定の資料となし、他の一部を排斥するに当つては、その理由を一々明示するの必要なく、判文上そのことが了知し得られれば足りる。