一 第一審では甲乙両請求が選択的に併合されたため甲請求のみが認容されたが、控訴審では乙請求を第一次的請求、甲請求を予備的請求とすることに併合の態様が変更されたため乙請求のみを認容する場合には、甲請求を認容した第一審判決は、当然に失効するものと解すべきであるから、これを取り消すことを要しない。 二 損害賠償額の予定の特約を記載して振り出された約束手形においては、右特約は、振出人と受取人との間において、民法上の効力を生ずるものと解すべきである。
一 控訴審で請求併合の態様が変更されたため認容の請求に変更を生じた場合と第一審判決取消の要否。 二 損害賠償額の予定の特約を記載して振り出された約束手形における右特約の効力。
民訴法227条,民訴法232条,民訴法386条,手形法75条,民法420条
判旨
予備的併合において控訴審が第一次的請求を認容した場合、予備的請求に関する第一審判決は当然に失効するため、控訴審は第一審判決を取り消す必要はない。
問題の所在(論点)
控訴審において請求の予備的併合がなされ、第一次的請求が認容された場合に、既に下されていた予備的請求に関する第一審判決を主文で取り消す必要があるか(第一審判決の当然失効の成否)。
規範
請求の予備的併合において、第一次的請求が認容されることを解除条件として予備的請求が申し立てられている場合、第一次的請求を認容する判決がなされたときは、予備的請求については裁判を要しない。この場合、当該予備的請求について既になされた第一審判決は、後順位の請求を審判対象から外す結果として、当然に失効する。
重要事実
被上告人(原告)は、上告人(被告)らに対し、貸金返還請求と手形金支払請求を併合して提訴した。第一審は選択的併合として審理し、貸金請求のみを認容した。これに対し上告人らが控訴したところ、控訴審において被上告人は併合の態様を予備的併合に変更し、手形金請求を第一次的請求、貸金請求を予備的請求とした。控訴審は第一次的請求である手形金請求を認容したが、第一審判決(貸金請求認容分)の取消しを主文で示さなかったため、上告人らが手続違背を主張して上告した。
あてはめ
本件では、控訴審において請求の併合態様が変更され、手形金支払請求が第一次的請求、貸金返還請求が予備的請求とされた。控訴審が第一次的請求である手形金請求を認容した以上、解除条件の成就により予備的請求である貸金返還請求については裁判を要しない状態となる。したがって、予備的請求について認容していた第一審判決は当然に失効するため、原判決が第一審判決を取り消さなかったとしても、審理を尽くしていない等の違法は存しない。
結論
第一次的請求が認容された場合、予備的請求に係る第一審判決は当然に失効するため、判決主文においてこれを取り消す必要はない。
実務上の射程
訴えの変更や併合態様の変更が控訴審でなされた場合の判決主文の構成に資する。予備的併合の構造(解除条件付併合)から導かれる帰結であり、実務上、第一審の判断と矛盾する結論を控訴審で出す際の主文構成の論拠として重要である。
事件番号: 昭和36(オ)978 / 裁判年月日: 昭和38年12月13日 / 結論: 棄却
控訴審において請求の一部が減縮された場合に、残余部分について第一審判決を変更する理由のないときには、控訴棄却の主文をもつて判決すべきである(昭和二四年一一月八日第三小法廷判決、民集三巻一一号四九五頁等参照)。