判旨
予備的請求を追加した後に主位的請求を取り下げる行為は、実質的に請求を入れ替えるものであっても、民事訴訟法上の「請求の変更」には当たらず、口頭での取り下げも有効である。
問題の所在(論点)
予備的請求の追加後に主位的請求を取り下げることが、民事訴訟法上の「請求の変更」に該当し、書面による提出(旧民訴法232条2項、現行法143条参照)を要するか。
規範
訴訟の係属中に予備的請求を追加し、その後に当該予備的請求に対応する主位的請求(一次的請求)のみを取り下げる行為は、民事訴訟法における「請求の変更」には該当しない。
重要事実
被上告人(原告)は当初、手形金20万円(うち10万円は書替分)の支払を求めて提訴したが、第一審係属中に準備書面によって、予備的に書替部分を除いた手形金10万円の請求を追加した。その後、口頭弁論期日において、被上告人は主位的請求についてのみ訴えの取下げを行った。上告人は、この一連の手続が実質的に請求の変更に当たると主張し、書面によらない変更の違法を訴えて上告した。
あてはめ
本件において、被上告人はまず適法に予備的請求の追加を行っている。その後の期日における陳述は、既に併合されている請求のうち、一次的(主位的)な部分を単に「取り下げた」に過ぎない。これは既存の訴訟状態から特定の請求を撤回する行為であり、新たな請求を導入したり既存の請求を補正したりする「請求の変更」のプロセスとは区別される。したがって、書面を要する請求変更の手続を履践せず、口頭で取下げを陳述したとしても、手続上の違法は認められない。
結論
予備的請求の追加後の主位的請求の取下げは「請求の変更」に当たらないため、書面によらない陳述であっても適法である。
実務上の射程
訴えの交換的変更が「旧請求の取下げ」と「新請求の追加」の複合的性質を持つことに関連し、本判決は、既に予備的追加がなされている場合には、単なる取下げとして処理できることを示唆している。実務上は、取下げの要件(被告の同意等)に留意しつつ、請求の整理として活用される。
事件番号: 昭和37(オ)1148 / 裁判年月日: 昭和39年4月7日 / 結論: 棄却
一 第一審では甲乙両請求が選択的に併合されたため甲請求のみが認容されたが、控訴審では乙請求を第一次的請求、甲請求を予備的請求とすることに併合の態様が変更されたため乙請求のみを認容する場合には、甲請求を認容した第一審判決は、当然に失効するものと解すべきであるから、これを取り消すことを要しない。 二 損害賠償額の予定の特約…