判旨
控訴審において請求の趣旨を減縮した場合は訴の一部取下げにあたり、当該部分に関する第一審判決は当然に効力を失うため、裁判所は第一審判決を特に取り消すことなく、控訴棄却の判決をすることができる。
問題の所在(論点)
控訴審において請求の趣旨が減縮された場合、裁判所は第一審判決を取り消した上で減縮後の内容で判決を言い渡す必要があるか、それとも第一審判決の取消しを経ずに控訴を棄却することができるか。
規範
控訴審における請求の趣旨の減縮の申し立ては、性質上、訴の一部取下げ(民事訴訟法261条1項)に該当する。訴の取下げがなされた場合、その部分については当初から係属していなかったものとみなされるため、当該部分に関する第一審判決の効力は当然に消滅する。したがって、控訴審裁判所は改めて第一審判決の取消・変更を宣言する必要はない。
重要事実
被上告人(一審原告)が、第一審判決後に控訴審(原審)において損害金の率を変更し、請求を減縮する旨の申し立てを行った。これに対し、上告人(一審被告)は、請求が減縮された以上、原審は第一審判決を取り消して減縮後の範囲内で判決すべきであり、単に控訴を棄却したのは違法であると主張して上告した。
あてはめ
本件における被上告人の請求減縮の申し立ては、訴の一部取下げと解される。訴の一部取下げが行われたことにより、取り下げられた範囲に関する第一審判決の効力は当然に失効する。そうであれば、第一審判決のうち残存する部分と原審の判断が一致する限りにおいて、改めて第一審判決を取り消して変更を命ずる実益はなく、控訴棄却の主文を維持したとしても手続上の違法は存在しないといえる。
結論
控訴審での請求減縮は訴の一部取下げであり、第一審判決は当然に失効するため、改めて第一審判決を取り消す必要はない。
実務上の射程
控訴審における請求減縮の法的性質が「訴の一部取下げ」であることを明示する際に活用する。答案上は、不利益変更禁止の原則(民訴法304条)との関係で、原告(被控訴人)自ら減縮した場合には、結果として一審より受領額が減っても同原則に反しないことの理由付けとして、第一審判決の当該部分が当然失効する点を指摘する文脈で用いるのが効果的である。
事件番号: 昭和36(オ)978 / 裁判年月日: 昭和38年12月13日 / 結論: 棄却
控訴審において請求の一部が減縮された場合に、残余部分について第一審判決を変更する理由のないときには、控訴棄却の主文をもつて判決すべきである(昭和二四年一一月八日第三小法廷判決、民集三巻一一号四九五頁等参照)。