控訴審において請求の一部が減縮された場合に、残余部分について第一審判決を変更する理由のないときには、控訴棄却の主文をもつて判決すべきである(昭和二四年一一月八日第三小法廷判決、民集三巻一一号四九五頁等参照)。
一 控訴審において請求の一部が減縮された場合における控訴判決の主文 二 時機に後れた防禦方法として抗弁が却下された事例
民訴法232条,民訴法384条,民訴法139条
判旨
控訴審での請求減縮により、第一審判決のうち減縮部分は当然に失効するため、残余の請求を維持する場合の主文は「控訴棄却」で足りる。また、時機に後れた攻撃防御方法の却下において、重大な過失による提出遅延と訴訟完結の遅延が認められる場合は、民訴法157条(旧139条)の適用は適法である。
問題の所在(論点)
1. 控訴審での請求減縮に対し、第一審判決を変更せず「控訴棄却」とした主文の適否(民訴法296条・302条関連)。 2. 第4回口頭弁論期日に提出された抗弁が、時機に後れた防御方法(民訴法157条)として却下される要件を満たすか。
規範
1. 控訴審で請求が減縮された場合、減縮部分は初めから訴訟係属がなかったものとみなされ、これに対応する第一審判決の効力も当然に消滅する。したがって、控訴審が残余の請求につき第一審判決を維持するときは、第一審判決を変更する必要はなく、控訴棄却の判決をなすべきである。 2. 攻撃防御方法が、当事者の重大な過失により適切な時期に提出されず、かつその立証にさらなる期間を要して訴訟の完結を遅延させる場合には、時機に後れたものとして却下することができる。
重要事実
第一審で全部勝訴した原告(被上告人)が、被告(上告人)からの控訴提起後の控訴審口頭弁論において、請求額を一部減縮した。被告側は、控訴審の第4回口頭弁論期日に至って初めて、本件手形振出に要素の錯誤があること、および詐欺強迫による取消しの抗弁を提出したが、原審はこれを時機に後れた防御方法として却下した。上告人は、主文で第一審判決を変更しなかった点および抗弁却下の不当を訴えて上告した。
あてはめ
1. 請求減縮により減縮部分の第一審判決は当然に失効している。控訴審が残余の範囲内で第一審の判断を維持する場合、実質的に第一審判決と結論が一致するため、控訴棄却の形式をとっても処分権主義違反や理由齟齬には当たらない。 2. 本件抗弁は、その性質上、第一審や原審の第1回期日で提出可能であったことが明白である。にもかかわらず、証拠調べを尽くした第4回期日まで提出を怠ったのは重大な過失といえる。また、直ちに立証を終えられる事情もないため、審理を続行すれば訴訟完結を遅延させることは明らかである。
結論
1. 請求減縮後の残余請求を維持する場合、主文は控訴棄却で差し支えない。 2. 本件抗弁の却下は、重大な過失による時機に後れた防御方法の提出に当たり、適法である。
実務上の射程
訴えの一部取下げ(減縮)があった場合の控訴審主文の書き方に関する確立した判例実務を示す。答案上では、処分権主義や控訴審の審判範囲との関係で、失効した部分は審判対象から外れることを論証する際に引用する。また、157条却下については「却下決定の4要件」のうち「重大な過失」と「完結の遅延」を具体的事実から認定する際の基準となる。
事件番号: 昭和31(オ)556 / 裁判年月日: 昭和32年1月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において請求の減縮がなされた場合、減縮部分は初めから係属しなかったものとみなされ、第一審判決のうち当該部分は当然に効力を失う。控訴審は、残余の部分について理由がないと判断するときは、控訴棄却の判決をすべきである。 第1 事案の概要:上告人は、第一審判決に対して控訴を提起し、その控訴審の手続に…