民訴第三九一条にいわゆる「第一審判決理由の引用」とは、原判決の記載そのままを引用することを要するの謂ではなく、これに附加し、訂正し、あるいは削除を施した上で引用することを妨げない趣旨である。
民訴法第三九一条にいわゆる「引用」の趣旨
民訴法391条
判旨
控訴審判決が第一審判決を引用する際、その内容を付加、訂正、または削除して引用することは、民事訴訟法上の「引用」として許容される。
問題の所在(論点)
控訴審判決が第一審判決の理由を引用する場合において、一部の付加、訂正、削除を行うことが、民事訴訟法が認める「引用」にあたるか、またそれにより理由不備の違法が生じるか。
規範
控訴裁判所が判決理由を記載するにあたり、第一審判決を引用することは適法であり(民事訴訟法305条、旧391条)、その際、一言一句そのまま引用する必要はない。実質的に内容を維持しつつ、必要に応じて付加・訂正・削除を施して引用することも、判決理由が不明瞭にならない限り許容される。
重要事実
上告人は、控訴審判決が第一審判決の理由を引用する際、独自の付加、訂正、削除を行っていることを指摘した。これが適法な「引用」の範囲を逸脱しており、判決理由に不備がある(理由不備の違法)として上告を申し立てた事案である。
あてはめ
判旨によれば、民事訴訟法が定める引用とは、第一審判決の記載を無修正で転記することを意味しない。本件では、原審が適宜訂正等を行っているものの、それによって判決理由自体が不明確になったとは認められない。したがって、引用の手法に違法はなく、判決理由の不備という主張には理由がないと判断される。
結論
控訴審判決による第一審判決の修正引用は適法であり、理由不備の違法は認められないため、上告は棄却される。
実務上の射程
実務上、控訴審判決の簡素化を図るための「引用」の限界を示した判例である。答案上は、理由不備(民訴法312条2項6号)の成否が問題となる場面で、控訴審の判決書作成の実務慣行を肯定する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和31(オ)731 / 裁判年月日: 昭和32年3月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審判決が、第一審判決と同一の理由で請求原因事実を認め、かつ抗弁事実の不成立について第一審と異なる評価(擬制から証拠不十分への変更)をしつつも結論を維持する場合、判決文に民訴法384条1項適用の旨を明示しなくとも違法ではない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)の本訴請求に対し、第一審は請求原因…