一 第一審において全部勝訴の原告は、控訴審において、付帯控訴の方式により請求の拡張をすることができる。 二 控訴審において訴の変更による新訴が係属した場合、新訴については、控訴裁判所は、事実上第一審としての裁判をすべきであり、新訴に対する結論が旧訴に対する第一審判決の主文の文言と合致する場合であつても、控訴棄却の裁判をすべきではない(昭和三二年二月二八日第一小法廷判決、民集一一巻二号三七四頁参照)。
一 全部勝訴の原告は控訴審で請求の拡張をなしうるか 二 控訴審において訴が変更された場合と新訴に対する主文の判示方法
民訴法232条,民訴法378条,民訴法372条,民訴法384条
判旨
控訴審において交換的訴えの変更により新請求が認容される場合、裁判所は一審判決の当否を判断せず、新請求に基づく給付等を命じるべきであり、一審判決を維持する控訴棄却の主文を掲げることは誤りである。
問題の所在(論点)
控訴審において交換的訴えの変更がなされ、新請求が認容される場合に、裁判所が第一審判決に対する「控訴棄却」の主文を言い渡すことの可否。
規範
控訴審における交換的訴えの変更は、旧請求の取り下げと新請求の追加を伴うものである。この場合、新請求の審理は事実上の第一審として行われるものであり、控訴審の本来の目的である第一審判決の当否(控訴理由の有無)を判断するものではない。したがって、新請求を認容する場合には、旧請求に関する第一審判決を破棄し、直接新請求についての判決を下すべきである。
重要事実
被上告人(原告)は、第一審において「立替金債権」に基づき請求し、勝訴判決を得た。上告人(被告)がこれを不服として控訴したところ、被上告人は控訴審において「貸金債権」への交換的訴えの変更を行い、立替金請求を撤回した。原審(控訴審)は、この訴えの変更を許容した上で、貸金債権の存在を認め、被上告人の請求を認容すべきと判断したが、主文において「本件控訴を棄却する」との判決を言い渡した。
あてはめ
控訴人の控訴は、立替金請求を認めた一審判決に対してなされたものである。しかし、訴えの変更により一審の審理対象であった立替金請求は消滅し、控訴審では新たに貸金請求が審理の対象となっている。原審が貸金債権という新請求を認めることは、当該請求について事実上一審として裁判をすることにほかならず、もはや一審判決の当否を判断する余地はない。それにもかかわらず、一審判決を維持する「控訴棄却」の主文を掲げることは、判決理由と主文が矛盾する理由齟齬の違法がある。
結論
原判決を破棄する。控訴審で訴えの変更により新請求を認容する以上、控訴棄却の判決はできず、直接新請求に基づく支払を命じるべきである。
実務上の射程
控訴審における訴えの変更の適法性と、その際の主文の構成に関する重要判例である。答案上では、交換的訴えの変更により一審判決が当然に失効する(消滅する)という法的性質を説明する際に、本判例の論理(控訴棄却は不可)を用いることが有効である。
事件番号: 昭和29(オ)452 / 裁判年月日: 昭和32年2月28日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】控訴審での訴の変更により追加された新請求については、第一審判決の当否とは無関係に実質上の初審として判断すべきであり、新請求を認容する場合でも主文で控訴棄却の判決をすることは許されない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、第一審で訴外Dの貸金債権を滞納処分として差し押さえ、Dに代位して上告人(被…