一 控訴審において訴の変更による新訴が係属した場合、新訴については、控訴裁判所は、事実上第一審としての裁判をすべきであり、たとえ新訴に対する結論が旧訴に対する第一審判決の主文の文言と合致する場合であつても、控訴棄却の裁判をすべきではない。 二 訴の変更による新訴の提起があつても、旧訴につき適法な訴の取下または請求の放棄がない限り旧訴の係属は消滅しない。
一 控訴審において訴が変更された場合と新訴に対する主文の判示方法 二 訴の変更と旧訴
民訴法232条,民訴法384条,民訴法236条,民訴法203条
判旨
控訴審での交替的訴えの変更において、新請求を認容する場合であっても、旧請求と新請求の訴訟物が別個であるならば、主文で「控訴棄却」を宣告することは許されない。また、交替的変更に伴う旧訴の消滅には、相手方の利益保護の観点から、訴の取下げ(相手方の同意が必要)または請求の放棄という法的手続を要する。
問題の所在(論点)
控訴審で訴訟物の異なる新請求へ交替的に変更し、これを認容する場合に「控訴棄却」の主文を用いることの是非、および交替的変更における旧訴の繋属消滅の要件が問題となる。
規範
民訴法384条1項(現行284条・302条等参照)の「控訴棄却」は第一審判決の判断を維持する場合の宣告であり、同条2項の「他の理由により正当」とは同一訴訟物内の別理由による維持を指す。したがって、訴訟物の異なる新請求を認容する際は「控訴棄却」ではなく、新請求に基づく独自の給付判決をなすべきである。また、交替的訴えの変更がなされても、適法な「訴の取下げ」(相手方の同意要)又は「請求の放棄」がない限り、当然には旧訴の訴訟繋属は消滅しない。
重要事実
第一審で貸金債権に基づく請求が認められた後、控訴審で被上告人(原告)が求償債権に基づく請求への変更(交替的変更の意図)を申し立て、旧請求を撤回する旨陳述した。原審はこの変更を許容し、新請求(求償債権)を認容すべきとしたが、主文では「本件控訴を棄却する」との判決を言い渡した。上告人はこの訴えの変更に異議を述べていたが、旧請求の取下げに対する同意の有無や釈明はなされないまま、判決に至ったものである。
あてはめ
本件の両債権は当事者や金額が同一でも発生原因を異にする別個の訴訟物である。控訴棄却は第一審判決(貸金債権)の正当性を認めるものであるが、原審が認めたのは新請求(求償債権)であり、両者は包含関係にないため、控訴棄却主文は理由齟齬の違法がある。また、交替的変更において原告が旧訴の撤回を望んでも、相手方の訴訟上の利益(既判力取得等)を尊重すべきであり、同意ある取下げ等の要件を欠けば、旧訴の繋属は消滅せず裁判の脱漏(補充判決の対象)となる。
結論
原判決を破棄し、新請求に基づき上告人に支払いを命じる自判を行う。旧訴については当審の判断対象外である。
実務上の射程
控訴審での訴えの変更における主文の書き方、および交替的変更が「訴の取下げ+新訴提起」の複合行為であり、相手方の同意がなければ旧訴が消滅しないという理論的帰結(処分権主義と相手方の利益保護の調和)を示す際に用いる。
事件番号: 昭和29(オ)451 / 裁判年月日: 昭和33年2月25日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】控訴審において訴の変更により新たな請求が追加・置換された場合、裁判所はその新請求を認容する際、第一審判決の結果を維持する「控訴棄却」ではなく、自ら給付を命じる判決を主文で言い渡すべきである。 第1 事案の概要:被上告人(国)は、滞納処分に基づき差し押さえた貸金債権について代位請求を行い、第一審で勝…