判旨
行政処分の当否を判断する際の基準法理(処分時説)を再確認し、農地の売渡処分の適法性は、買収計画時の法令ではなく、当該売渡計画の策定又は処分当時の法令によって判断すべきである。
問題の所在(論点)
行政処分の適法性を判断するための基準時期(処分時説の適用範囲)が問題となり、本件では「売渡処分」の当否を判断するにあたり「買収計画時」と「売渡計画・処分時」のいずれの法令を適用すべきかが争点となった。
規範
行政処分の当否は、原則としてその処分がなされた時点の法令及び事実状態に基づいて判断される(処分時説)。特に自作農創設特別措置法に基づく処分において、買収計画と売渡計画(及び売渡処分)は別個の段階的な処分であるため、売渡処分の適法性は買収時の法令ではなく、売渡計画樹立または売渡処分当時の法令に適合しているか否かによって決する。
重要事実
本件は、自作農創設特別措置法に基づき行われた農地の売渡計画及び売渡処分の取消しを求める訴訟である。上告人らは、本件売渡の当否は、買収計画の基準となった昭和23年2月公布の改正前施行令によるべきであると主張した。しかし、本件の売渡計画が策定されたのは昭和25年であり、原審は同計画樹立時の法令である昭和23年10月改正後の施行令(政令315号)を適用してその適法性を判断した。
あてはめ
行政処分の適法性判断における「処分時説」の趣旨に照らせば、処分の取消訴訟において裁判所が判断の基礎とすべきは処分時の法令である。本件訴訟の対象は買収計画の取消しではなく、売渡計画及び売渡処分の取消しである。したがって、これら一連の売渡手続の当否を判断する基準は、買収計画当時の法令ではなく、売渡計画が定められた昭和25年当時の法令(昭和23年10月改正後の政令)である。原審が最新の政令を適用して判断したことに違法はない。
結論
本件売渡処分の当否は、処分当時の法令(昭和23年10月改正後の政令)によって判断されるべきであり、原判決の法令適用に誤りはないため、上告を棄却する。
実務上の射程
行政法における「処分時説」の具体例として、段階的行政過程(買収と売渡)における判断基準時を明確にしたもの。答案上では、処分後に法令が改正された場合や、複数の先行・後行処分が連なる事案において、どの時点の法令を適用すべきかを論述する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和30(オ)746 / 裁判年月日: 昭和33年5月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の買収計画の適否は、その計画が定められた時点の事実関係に基づき判断されるべきであり、過去の買収処分において買収されなかった事実のみをもって、後の買収処分が違法となることはない。 第1 事案の概要:上告人は仙台市に居住する大学教授であり、松山市内の農地を所有していた。昭和22年、愛媛県知事は上告…