法人がその事業目的のために所有する唯一の土地を自作農創設特別措置法により買収することは、憲法第二二条に違反するものでない。
法人がその事業目的のために所有する唯一の土地を自作農創設特別措置法により買収することは、憲法第二二条に違反するか。
憲法22条,自作農創設特別措置法,裁判所法10条1号,最高裁判所裁判事務処理規則9条3項
判旨
憲法22条の営業の自由は公共の福祉による制限を受けるものであり、農業生産力の発展等の目的で制定された法律に基づく買収計画により事実上の営業上の支障が生じても、同条に違反しない。
問題の所在(論点)
公共の福祉に基づく経済的規制を目的とした行政処分が、個人の営業に事実上の支障を及ぼす場合、憲法22条1項の「営業の自由」を侵害し違憲となるか。
規範
憲法22条1項の営業の自由は無制限なものではなく、公共の福祉に反しない限りにおいて保障される。したがって、公共の福祉のために制定された法律、またはこれに基づく行政処分によって営業遂行の自由が直接または間接に妨げられることがあっても、直ちに同条に違反することにはならない。
重要事実
上告人は、事業目的のために所有する唯一の土地が、自作農創設特別措置法に基づく「未墾地買収計画」によって買収された。上告人は、この処分により営業の継続が不可能になり廃業せざるを得ない状態に陥ったことから、当該処分が憲法22条に違反し、営業の自由を侵害するものであると主張して争った。
あてはめ
自作農創設特別措置法は、自作農の急速かつ広汎な創設を通じて農業生産力の発展と農村の民主化を図るという「公共の福祉」のための必要に基づき制定されたものである。本件買収計画は同法に基づく適法な処分である。上告人が主張する営業上の支障は、この適法な処分に伴う事実上の帰結にすぎない。また、補足意見によれば、上告人は事業継続自体を禁止されたわけではなく、買収計画が直接営業を禁ずる内容でもない。したがって、本件処分は公共の福祉の範囲内にある。
結論
本件買収計画が上告人の営業に支障をきたすことがあっても、憲法22条1項に違反するものではない。上告人の請求は認められない。
実務上の射程
経済的自由の制限に関する初期の判例であり、「公共の福祉」による制約を広範に認める傾向にある。司法試験の答案上は、営業の自由が絶対無制約ではないことの論拠として、また制限の態様が直接的・法的禁止ではなく事実上の支障にとどまる場合の違憲性判断(侵害の強度の検討)において参照し得る。後の薬局距離制限訴訟等の違憲審査基準論へ繋がる前段階の議論として位置づけられる。
事件番号: 昭和29(オ)132 / 裁判年月日: 昭和34年7月15日 / 結論: 棄却
自作農創設特別措置法に基く未墾地買収計画の取消訴訟において、買収処分完了後売渡前に政府において買収目的地の開発以外の目的に使用することに決定したという事実をしんしやくして、右計画を違法とすることは許されない。