自作農創設特別措置法に基く未墾地買収計画の取消訴訟において、買収処分完了後売渡前に政府において買収目的地の開発以外の目的に使用することに決定したという事実をしんしやくして、右計画を違法とすることは許されない。
自作農創設特別措置法に基く未墾地買収計画の取消訴訟において、右計画の適否を判断するにつき、買収処分完了後売渡前に生じた事情をしんしやくすることの許否。
行政事件訴訟特例法1条,自作農創設特別措置法30条,自作農創設特別措置法31条,自作農創設特別措置法34条,自作農創設特別措置法41条
判旨
行政処分の違法性判断の基準時は処分時であり、処分後の事情の変化によって処分の瑕疵が生じることはない。また、未墾地買収における必要性の認定には、農業政策や社会的条件等を総合的に考慮する広範な裁量権が認められるが、開墾が明らかに不可能・不当な土地を買収することは裁量権の限界を超える。
問題の所在(論点)
1. 取消訴訟における行政処分の違法判断の基準時はいつか(処分時か口頭弁論終結時か)。2. 未墾地買収の必要性に関する農業委員会の判断に裁量権が認められるか、またその限界はどこにあるか。
規範
1. 行政処分の取消訴訟における違法判断の基準時は、原則として「処分時」である。処分後の事後的状況の変化は、既になされた処分の適法性に影響を及ぼさない。2. 法律の規定に基づき、農業上の利用増進等の必要性を判断してなされる処分については、行政庁に広範な裁量権が認められる。ただし、客観的に目的達成が「明らかに不可能」または「明らかに不法不当」と認められる場合には、裁量権の限界を超え違法となる。
重要事実
農業委員会が、自作農創設特別措置法に基づき、土地所有者の意に反して未墾地買収処分を行った。これに対し所有者(上告人)が、買収処分完了後売渡前に発生した事情を理由に処分の違法を主張したほか、開拓の必要性の認定に関する農業委員会の判断に裁量権の逸脱・濫用があるとして、処分の取消しを求めて提訴した。
あてはめ
1. 取消訴訟の本質は行政処分の違法性を確認してその効力を失わせるものであり、裁判所が処分後の時点において行政庁の立場で正当性を判断するものではない。したがって、本件でも処分時の事情に基づき適否を決すべきであり、その後の事情は影響しない。2. 未墾地買収の必要性判断には、開墾適否のみならず、社会的条件、国の農業政策、資源確保、災害防止等の諸要素を総合検討する必要がある。本件では、開墾が「明らかに不可能」等の事情はなく、農業委員会が諸要素を基礎として行った判断は、裁量権の範囲内にあるといえる。
結論
行政処分の違法判断は処分時を基準とすべきであり、本件買収処分において、農業委員会がその裁量権を逸脱・濫用したとは認められないため、上告を棄却する。
実務上の射程
取消訴訟の基準時についてのリーディングケースであり、答案上は「行政処分の違法性は処分時の事実状態及び法律状態に基づき判断される」という原則の根拠として用いる。また、裁量権の限界について「明らかに不可能・不当」という具体的な基準を示している点は、行政裁量の逸脱・濫用を検討する際の当てはめの指標として有用である。
事件番号: 昭和29(オ)132 / 裁判年月日: 昭和34年7月15日 / 結論: その他
法人がその事業目的のために所有する唯一の土地を自作農創設特別措置法により買収することは、憲法第二二条に違反するものでない。