判旨
ある当事者間において請求権の存否を確定した既判力ある判決が存在しても、その既判力は当該訴訟の当事者間にのみ生じ、別訴の当事者間における事実認定を拘束するものではない。
問題の所在(論点)
訴外の第三者との間で確定した判決(前訴)の既判力が、別個の当事者間で行われる後訴における事実認定や権利関係の判断を拘束するか(既判力の主観的範囲)。
規範
判決の既判力は、原則としてその訴訟の当事者間においてのみ生じる(相対的効力の原則)。したがって、別個の当事者間で行われた前訴判決において、ある請求権の存否や事実関係が確定されたとしても、その判断は後訴の当事者間における事実認定を法律上拘束するものではない。
重要事実
被上告人が、訴外Dとの間で行われた前訴(一審判決が確定)において、本件家屋の明渡請求権を有しないことが確定していた。その後、上告人との間で争われた本件訴訟において、上告人は前訴の確定判決の結果を援用し、事実認定等に影響を及ぼすべきであると主張して上告した。
あてはめ
前訴は被上告人と訴外Dとの間の紛争を解決するものであり、その既判力は両当事者間においてのみ、被上告人がDに対して明渡請求権を有しないことを確定するにとどまる。本件は上告人と被上告人との間の別個の訴訟であり、前訴の判決が本件当事者間の係争事実の確定に影響を及ぼすことはない。また、記録上、上告人が本件建物部分の占有に関する事実を争った形跡も認められないことから、原審が当該事実を「争いのない事実」として扱ったことに違法はない。
結論
前訴の確定判決は本件当事者間の事実認定に影響を及ぼさない。上告人が本件建物部分を占有している事実に争いがない以上、明渡を命じた原判決は正当である。
実務上の射程
既判力の主観的範囲(民事訴訟法115条1項)に関する基本原則を確認する際、特に前訴で敗訴した当事者が別訴で有利な事実認定を求める場面や、その逆の場面で「判決の相対的効力」を論証するために用いる。
事件番号: 昭和30(オ)83 / 裁判年月日: 昭和31年5月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】占有権に基づく請求において、占有の事実認定は原審の適法な事実確定に基づくべきであり、主張されていない事実や原審の認定に反する事実を前提とした上告理由は採用されない。また、予備的併合において主位的請求が認容された場合、予備的請求について判断する必要はない。 第1 事案の概要:被上告人が、本件建物の占…