判旨
賃借人が無断転貸を行い、その転借人または転々借人の占有によって返還義務が履行不能となった場合、賃借人はその不履行につき当然に責任を負う。また、明渡遅延により生じる賃料相当額の損害は、特別の事情の有無にかかわらず通常生ずべき損害に含まれる。
問題の所在(論点)
無断転貸が行われた場合において、転借人等の占有による明渡遅延について賃借人が債務不履行責任(損害賠償義務)を負うか。また、その際の損害額(賃料相当額)は通常損害といえるか。
規範
1. 賃借人が賃貸人の承諾なく転貸(または転々貸)をした場合、賃借人は無断転貸という債務不履行を犯している以上、転借人等の居住により明渡義務が履行できないときは、その帰責性の有無を問わず、明渡遅延の責任を負う。 2. 賃借人が家屋明渡義務を履行しないことにより生じる賃料相当額の損害は、民法416条1項にいう「通常生ずべき損害」にあたり、転々貸等の経緯にかかわらずその性質は変わらない。
重要事実
賃借人A3は、賃貸人(被上告人)の承諾を得ずに家屋をA4に転貸し、さらにA1・A2へ転々貸された。賃貸借契約の終了等に伴いA3は明渡義務を負ったが、家屋は依然として転々借人らが占有していた。A3は、明渡不能は自己の責に帰すべからざる事由によるものであること、また転々貸による損害は予見不可能な特別事情によるものであること等を主張して、損害賠償義務を争った。
あてはめ
本件では、賃借人A3による転貸およびその後の転々貸は、いずれも賃貸人の承諾を欠く不適法なものである。A3には無断転貸という債務不履行が認められる以上、転借人らが占有を継続し明渡が遅延している事態については、A3が当然にその責任を負うべきである。また、明渡遅延に伴う賃料相当額の損害は、社会通念上、当該義務不履行から通常発生する範囲の損害(通常損害)であり、転々貸が予期せぬ形で行われたとしても、損害の性質が特別損害に変化することはない。
結論
賃借人は、転借人等の占有による明渡遅延について債務不履行責任を負い、明渡完了までの賃料相当額を通常損害として賠償すべきである。
実務上の射程
賃借人の履行補助者(転借人等)の過失を問うまでもなく、無断転貸という先行する違法状態がある場合には、賃借人の広範な責任を認める一助となる判例である。答案上は、明渡遅延の損害賠償を論じる際、賃料相当額を416条1項の通常損害として処理する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和30(オ)350 / 裁判年月日: 昭和32年2月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸人の承諾を得ないで賃借人から目的物の転貸を受けた者は、賃貸人に対してその占有を対抗することができず、賃貸人は賃借人との間の賃貸借契約の解除の有無にかかわらず、当該転借人に対して明渡しを請求し得る。 第1 事案の概要:被上告人(賃貸人)は、第一審被告D(賃借人)に対し本件家屋を賃貸していた。しか…