判旨
賃借人が賃貸人の承諾なく第三者に賃借物を使用させた場合、それが無断転貸(民法612条1項)に該当する以上、賃貸人は同条2項に基づき賃貸借契約を解除することができる。
問題の所在(論点)
賃借人が賃貸人の承諾を得ることなく、第三者に「営業として」物件を使用させる行為(使用貸借)が、民法612条にいう無断転貸に該当し、契約解除の事由となるか。
規範
民法612条1項は、賃借人が賃貸人の承諾を得ずに賃借権を譲渡し、または賃借物を転貸することを禁止している。同条2項に基づき、賃借人がこの規定に反して第三者に賃借物の使用または収益をさせたときは、賃貸人は契約の解除をすることができる。
重要事実
本件家屋の賃借人(上告人)は、昭和29年2月頃、第三者である訴外Eとの間で、EがD株式会社の名称を用いて自己の営業として本件家屋を使用することについて、使用貸借契約を締結し、実際に使用させた。これに対し、賃貸人は無断転貸を理由として、同年5月18日に賃貸借契約の解除を通知した。
あてはめ
原審において、賃借人と訴外Eとの間に本件家屋の使用貸借契約が締結された事実が適法に認定されている。たとえ無償の使用貸借であっても、賃貸人の承諾なく第三者に物件の独占的な使用を委ねることは、民法612条1項の転貸に該当すると解される。本件では、Eが自己の営業のために家屋を使用しており、賃貸人の承諾があったとは認められないため、同条2項の解除権が発生している。したがって、昭和29年5月18日付の解除通知により、本件賃貸借契約は有効に終了したといえる。
結論
本件賃貸借契約は無断転貸を理由とする解除により有効に終了しているため、上告人の請求は認められず、上告は棄却される。
実務上の射程
本判決は、無断転貸の事実があれば解除権が発生することを簡潔に示したものである。現在の実務(最高裁昭和28年9月25日判決以降)では、解除には「賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情」がないことが必要とされるが、本件のような明白な独占的使用貸借においては、特段の事情がない限り、原則通り解除が認められるという構成の基礎となる。
事件番号: 昭和28(オ)632 / 裁判年月日: 昭和29年6月8日 / 結論: 棄却
控訴審における請求の拡張は、たとえ請求の基礎に変更があつても、相手方が異議なく応訴した場合は、これを許すべきである。