判旨
賃借人が不在中に、その不在中の管理を任せていた者が行った無断転貸について、賃借人本人が賃借人としての義務違反の責任を負うべきとした事案である。
問題の所在(論点)
賃借人が応召不在中に、管理を委ねていた者が行った無断転貸について、賃借人本人が民法612条1項・2項に基づく解除の責任を負うか。
規範
賃借人が不在等の事情により、第三者に借家関係の管理を代行させている場合、当該管理者の行為は賃借人本人の行為と同視される。したがって、管理者が賃貸人の承諾なく行った無断転貸(民法612条1項違反)等の義務違反行為について、賃借人本人はその責任を免れず、賃貸借契約の解除事由となり得る。
重要事実
上告人Aは、昭和20年の相続により父の家屋賃借権を承継した。しかし、Aは当時応召により不在であったため、復員するまでの約2年間、実母EがAに代わって当該借家関係を管理していた。その管理期間中、母Eは賃貸人の承諾を得ることなく本件家屋を無断転貸した。Aは復員後、自らのあずかり知らぬ場所で行われた行為であるとして、転貸の責任を否定し争った。
あてはめ
本件において、上告人Aは相続により賃借人の地位を承継しているが、応召不在という特殊事情から母Eに借家関係の管理を委ねていたといえる。このように管理を代行させている関係下では、管理者の行為は賃借人の管理の範囲内における行為と評価される。母Eがなした無断転貸は賃借人としての義務違反に該当し、Aはこの行為につき自ら責に任ずべき立場にあると解される。
結論
賃借人Aは、不在中に母Eが行った無断転貸について賃借人としての責任を負う。したがって、当該無断転貸を理由とする賃貸借契約の解除は有効である。
実務上の射程
賃借人本人が直接関与していない場合でも、家族や代理人などの「履行補助者」による義務違反行為について賃借人本人の責任を肯定する際の根拠として活用できる。事案は戦後の応召不在という特殊な状況だが、現代においても不在中の管理を任せた親族の行為に責任が及ぶという法理として射程を有する。
事件番号: 昭和27(オ)390 / 裁判年月日: 昭和29年4月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸人の代理人と称する者から受けた承諾が転貸の承諾として認められない場合、表見代理の成否を検討するまでもなく無断転貸(民法612条2項)による解除権の発生が肯定される。 第1 事案の概要:上告人は、賃貸人の関係者である訴外Dから本件建物の転貸について承諾を得たと主張した。しかし、原審はDが転貸の承…