判旨
保証人が主たる債務を弁済したときは民法500条、501条により当然に債権者の有した一切の権利を代位取得するが、被担保債権が確定している根抵当権についても、弁済に伴う移転が認められる。また、求償権行使に対し債務者は手形法上の方式による弁済事実の記載を求める権利を有せず、法定利息や費用を含まない一部提供は債務の本旨に従った提供とはいえない。
問題の所在(論点)
1. 被担保債権が確定している根抵当権について、保証人の代位弁済による移転が認められるか。2. 求償権を行使された債務者が、手形法上の法定方式による支払事実の記載を債権者に要求できるか。3. 法定利息や費用を含まない債務の提供は、債務の本旨に従った有効な提供といえるか。
規範
1. 保証人が弁済したときは、民法500条(旧)、501条に基づき、当然に債権者に代位し、債権者が有していた一切の権利は弁済者に移転する。2. 根抵当権であっても、被担保債権が確定している限り、その随伴性に基づき、代位弁済による移転を否定する理由はない。3. 弁済者は、単なる出捐額だけでなく、弁済日以後の法定利息、避けることのできなかった費用その他の損害賠償を含めた求償権(民法459条等)を有する。
重要事実
上告人(債務者)は銀行に対し約束手形を振り出し、手形割引を受けた。その際、上告人は銀行に対し根抵当権を設定し登記した。被上告人(保証人)は銀行に対し保証債務を負っていたが、上告人が手形金の支払を遅滞したため、銀行に対し弁済を行った。被上告人は根抵当権の移転登記(附記登記)を完了し、求償権を行使しようとした。これに対し上告人は、手形法上の方式による一部支払の記載を求めたほか、利息等の支払を含まない元本のみの支払を申し入れたが、被上告人がこれを拒絶したため、受領遅滞や弁済の有効性が争われた。
あてはめ
1. 本件根抵当権は被担保債権が確定しており、保証人である被上告人が弁済した以上、民法501条の規定により当然に被上告人に移転する。2. 求償権の行使は手形債権そのものの行使とは性質を異にするため、債務者が手形面上への記載を求める法的権利があるとは理論上認められない。3. 被上告人は出捐額のほか法定利息や費用についても求償権を有するところ、上告人が申し入れたのは元本相当額のみであり、利息や費用を含まない提供は債務の本旨に従ったものとは評価できない。被上告人が高率な利息を強制した事実は認められず、全額の提供がない以上、拒絶に正当な理由がある。
結論
被担保債権の確定した根抵当権は代位弁済により移転する。また、利息・費用を含まない不完全な提供は有効な弁済の提供とはならず、債務者の請求は認められない。
実務上の射程
根抵当権の確定後の随伴性を肯定した重要な判断。答案上は、代位弁済(民法501条)に伴う担保権の移転において、確定済みの根抵当権も普通抵当権と同様に扱われることを論証する際に活用できる。また、求償権の範囲が利息・費用等を含むことの確認や、不完全な弁済の提供(民法493条)の効力を否定する際にも参照し得る。
事件番号: 昭和55(オ)351 / 裁判年月日: 昭和59年5月29日 / 結論: 棄却
一 保証人と債務者との間に求償権について法定利息と異なる約定利率による遅延損害金を支払う旨の特約がある場合には、代位弁済をした右保証人は、物上保証人及び当該物件の後順位担保権者等の利害関係人に対する関係において、債権者の有していた債権及び担保権につき、右特約に基づく遅延損害金を含む求償権の総額を上限として、これを行使す…