保証人が債権者に代位弁済をしたのちに、債務者から保証人に対して内入金の支払がされたときは、保証人が代位弁済によつて取得した求償権と債権者に代位した原債権とのそれぞれにつき内入弁済があつたものと解すべきである。
代位弁済をした保証人に対して債務者のした内入金の支払と求償権及び原債権に対する弁済関係
民法501条
判旨
弁済による代位において、保証人が担保権を行使して優先弁済を受ける対象は「原債権」そのものであり、その行使の限度を画する「求償権の範囲」とは、約定の遅延損害金等を含む求償権の総額を指す。
問題の所在(論点)
弁済による代位(民法501条)に基づき保証人が担保権を行使する場合、優先弁済を受ける対象は「原債権」か「求償権」か。また、同条の「求償をなすことができる範囲」の意義、及び代位弁済後の内入弁済の充当関係が問題となる。
規範
民法501条の弁済による代位は、求償権を確保するために原債権及びその担保権を代位弁済者に移転させる制度である。したがって、代位弁済した保証人が根抵当権を行使して優先弁済を受けるのは、原債権であって求償権ではない。同条の「求償をなすことができる範囲」とは、求償権の総額(約定利率による遅延損害金を含む)を指し、個別の利率を比較するものではない。また、代位弁済後の内入弁済は、求償権と原債権のそれぞれに対し、民法の規定に従って充当される。
重要事実
銀行に対し主債務者Dの債務を保証した保証人(被上告人)が、Dに代わり代位弁済を行った。Dの不動産には銀行のために根抵当権が設定されていたため、保証人は代位による根抵当権の実行を申し立てた。配当手続において、保証人は求償権に基づく約定利率(年14.6%)での配当を主張したが、競売裁判所および原審は、優先弁済の対象を求償権とした上で、利率については原債権の利率と求償権の利率を比較し制限を加えるなどして配当額を算定した。
あてはめ
保証人が代位によって取得した根抵当権を行使する場合、被担保債権は依然として「原債権(貸金債権等)」であり、求償権に転化するわけではない。そのため、優先弁済の対象はあくまで原債権の額である。原審は配当を受ける債権を求償権と解し、かつ遅延損害金の利率について求償権と原債権の利率を比較して制限したが、これは501条の解釈を誤っている。同条の範囲制限は、権利行使の「上限額」が求償権総額であることを意味するにすぎない。また、内入弁済については原債権と求償権の両方に充当されるべきところ、原審は原債権の残額を確定させておらず、審理不尽といえる。
結論
代位弁済した保証人が優先弁済を受けるのは、求償権の総額を上限とした「原債権」の範囲内である。原審の判断には法令の解釈を誤った違法があるため、破棄差し戻しを免れない。
実務上の射程
代位弁済者が担保権を実行する際の配当計算において、原債権と求償権の二段構えで計算が必要であることを示す。答案上は、501条の趣旨(求償権の確保)から「原債権が移転する」という法的性質を論証し、求償権が権利行使の「枠(上限)」として機能することを明示する際に活用する。
事件番号: 昭和54(オ)448 / 裁判年月日: 昭和59年11月16日 / 結論: 棄却
一 保証人と債務者との間に求償権について法定利息と異なる約定利率による遅延損害金を支払う旨の特約がある場合には、代位弁済をした右保証人は、物上保証人及び当該物件の後順位担保権者等の利害関係人に対する関係において、債権者の有していた債権及び担保権につき、右特約に基づく遅延損害金を含む求償権の総額を上限として、これを行使す…