一 保証人と債務者との間に求償権について法定利息と異なる約定利率による遅延損害金を支払う旨の特約がある場合には、代位弁済をした右保証人は、物上保証人及び当該物件の後順位担保権者等の利害関係人に対する関係において、債権者の有していた債権及び担保権につき、右特約に基づく遅延損害金を含む求償権の総額を上限として、これを行使することができる。 二 保証人と物上保証人との間に民法五〇一条但書五号所定の代位の割合と異なる特約がある場合には、代位弁済をした右保証人は、物上保証人の後順位担保権者等の利害関係人に対する関係において、右特約の割合に応じて債権者が物上保証人に対して有していた抵当権等の担保権を代位行使することができる。
一 保証人と債務者との間に成立した求償権につき約定利率による遅延損害金を支払う旨の特約と民法五〇一条所定の代位の範囲 二 保証人と物上保証人との間に成立した民法五〇一条但書五号所定の代位の割合と異なる特約の第三者に対する効力
民法442条2項,民法459条,民法501条
判旨
保証人が債務者と求償権の遅延損害金を定める合意、または物上保証人と代位の割合を定める合意をした場合、これらの合意は後順位抵当権者等の利害関係人に対しても効力を有する。代位弁済者は、合意後の求償権総額を上限として、移転した担保権の範囲内で優先弁済を受けることができる。
問題の所在(論点)
保証人と債務者または物上保証人との間でなされた、求償権の利率や代位の割合に関する特約は、後順位抵当権者等の第三者に対しても効力を有するか。
規範
1. 保証人と債務者間の求償権に関する遅延損害金の特約は、行使される担保権(原債権)の内容を変動させるものではなく、後順位担保権者等の利害関係人に不当な影響を及ぼさない。そのため、保証人は特約による損害金を含む求償権総額を上限として、代位した担保権を行使できる。 2. 保証人と物上保証人との間の代位の割合(民法501条但書5号)に関する特約も、担保権自体の帰属割合を定めるにすぎず、原債権や担保権を増大させるものではない。したがって、後順位抵当権者等の利益を不当に侵害するものではなく、特約の割合に応じた担保権の代位行使が認められる。
重要事実
債務者D社は銀行から2000万円を借り入れ、代表者Fが所有不動産に根抵当権(極度額2000万円)を設定した。保証人(被上告人)はD社との間で、代位弁済時の求償権に年14.6%の損害金を付す旨を合意し、さらに物上保証人Fとの間で、代位の割合を「全部代位」とする合意をした。その後、上告人が後順位根抵当権を設定。保証人は銀行へ代位弁済し、根抵当権移転の附記登記を経由した。不動産競売による配当において、保証人が特約に基づく求償権全額を前提に優先配当を主張したため、後順位者である上告人が争った。
あてはめ
保証人が代位弁済した元利合計は約1914万円であり、特約に基づく配当期日までの損害金を含めた求償権総額は約2299万円となる。一方、代位によって移転した原債権(銀行の債権)の元利合計は約2277万円である。本件特約は、行使の「上限」である求償権を画定し、かつ担保権の「帰属割合」を全部とするものである。これらは原債権の範囲を拡張するものではなく、単に既存の担保権(極度額2000万円)の枠内での行使を認めるにすぎない。したがって、後順位抵当権者である上告人は、極度額による制限以上の不利益を被ることはなく、特約の効力を受けるといえる。
結論
保証人と債務者・物上保証人との間の特約は有効であり、保証人は特約に基づく求償権を上限として、根抵当権の極度額(2000万円)の範囲内で、後順位者に優先して配当を受けることができる。
実務上の射程
民法501条の代位の割合に関する任意規定性を認める。答案上は、代位弁済者が行使できる範囲の二重の画定(求償権の範囲内かつ原債権・担保権の範囲内)を論じる際の根拠となる。特に、債務者や物上保証人との特約が第三者に及ぼす影響を否定するロジックとして重要である。
事件番号: 昭和55(オ)351 / 裁判年月日: 昭和59年5月29日 / 結論: 棄却
一 保証人と債務者との間に求償権について法定利息と異なる約定利率による遅延損害金を支払う旨の特約がある場合には、代位弁済をした右保証人は、物上保証人及び当該物件の後順位担保権者等の利害関係人に対する関係において、債権者の有していた債権及び担保権につき、右特約に基づく遅延損害金を含む求償権の総額を上限として、これを行使す…