一 共同抵当の目的である債務者所有の甲不動産及び物上保証人所有の乙不動産にそれぞれ債権者を異にする後順位抵当権が設定されている場合において、乙不動産が先に競売されて一番抵当権者が弁済を受けたときは、乙不動産の後順位抵当権者は、物上保証人に移転した甲不動産に対する一番抵当権から甲不動産の後順位抵当権者に優先して弁済を受けることができる。 二 物上保証人が、その所有の不動産及び債務者所有の不動産につき共同抵当権を有する債権者との間で、債権者の同意がない限り弁済等により取得する権利を行使しない旨の特約をしても、物上保証人所有の不動産の後順位抵当権者は、物上保証人が弁済等により代位取得する抵当権から優先弁済を受ける権利を失わない。 三 債権の一部につき代位弁済がされた場合、右債権を被担保債権とする抵当権の実行による競落代金の配当については、代位弁済者は債権者に劣後する。
一 共同抵当の目的である債務者所有の甲不動産及び物上保証人所有の乙不動産に債権者を異にする後順位抵当権が設定され乙不動産が先に競売された場合に甲不動産から弁済を受けるときにおける甲不動産の後順位抵当権者と乙不動産の後順位抵当権者の優劣 二 物上保証人がその所有の不動産及び債務者所有の不動産につき共同抵当権を有する債権者との間で代位権不行使の特約をした場合と物上保証人所有の不動産の後順位抵当権者の優先弁済を受ける権利 三 債権の一部につき代位弁済がされた場合の競落代金の配当についての債権者と代位弁済者との優劣
民法304条,民法351条,民法372条,民法392条2項,民法500条,民法501条,民法502条1項
判旨
物上保証人所有の不動産が先に競売され、債務者所有不動産の共同根抵当権者が一部弁済を受けた場合、物上保証人は代位により当該根抵当権を取得するが、その権利行使は配当において債権者に劣後する。また、物上保証人の後順位抵当権者は、物上保証人が代位取得した権利から、物上保証人に対する権利行使を制限する特約の有無にかかわらず優先弁済を受けられる。
問題の所在(論点)
物上保証人所有の不動産が先順位者によって競売された場合において、(1)物上保証人の後順位抵当権者は、物上保証人が代位取得した先順位担保権から優先弁済を受けられるか、(2)物上保証人と債権者間の代位権行使制限特約は後順位者の権利を左右するか、(3)一部代位弁済が生じた際の残債権者と代位者の配当順位はどうなるか。
規範
1. 物上保証人が一部弁済により債権者に代位する場合(民法502条1項)、担保権の実行による配当については、代位の制度趣旨(求償権確保)に照らし、債権者がその残債権につき代位弁済者に優先する。2. 物上保証人所有の不動産の債務者に対する求償権及び代位取得した担保権に対し、当該不動産の後順位抵当権者は物上代位的に優先弁済権を行使できる。3. 物上保証人と債権者間での「債権者の同意なき代位権行使を禁ずる特約」は、債権者による競売手続が既に開始されている場合、後順位抵当権者の優先弁済権を制限する効力を有しない。
重要事実
債権者(上告人)は、債務者D所有の建物等と物上保証人E・F所有の土地等に共同根抵当権(第1順位等)を有していた。被上告人は、E・F所有の土地等に第2順位抵当権を有していた。Eと上告人の間には、上告人の同意なく代位権を行使しない旨の特約があった。上告人が第1順位根抵当権に基づき全物件の競売を申し立て、先に土地等が配当された結果、上告人は債権の一部弁済を受けた。その後、建物等の配当において、土地等の後順位抵当権者である被上告人と、建物等の後順位根抵当権者である上告人のいずれが優先するかが争われた。
あてはめ
1. 被上告人は物上保証人所有地の後順位抵当権者として、Eらが代位取得した建物等の一番抵当権に対し物上代位的に優先弁済権を有する。2. 特約は物上保証人自身の独自の実行を禁ずる趣旨にすぎず、既に債権者の申立てで開始された競売手続における後順位者の優先弁済を妨げない。3. もっとも、建物等の配当では、一番根抵当権の枠内において、一部弁済を受けたに過ぎない債権者(上告人)が残債権について代位者(及びその後順位者である被上告人)に優先して配当を受けるべきである。
結論
物上保証人所有の不動産が先に実行された場合、物上保証人の後順位者は代位取得された担保権から優先弁済を受けられるが、その配当額は、債権者の残債権が優先的に満足を受けた後の残余の範囲に限定される。
実務上の射程
共同抵当における異時配当(民法392条2項)の場面で、物上保証人と債務者が混在する場合の処理を定めた。答案上は「債権者優位説(一部弁済)」と「後順位者の代位」を組み合わせて論じる必要がある。特に、債権者と物上保証人間の特約が第三者(後順位抵当権者)の法的地位を不当に害さないという判断は、契約の相対的効力の限界を示すものとして重要である。
事件番号: 昭和60(オ)1084 / 裁判年月日: 昭和61年4月18日 / 結論: 棄却
物上保証人所有の甲不動産と債務者所有の乙不動産とを共同抵当の目的とする順位一番の抵当権が設定されているとともに乙不動産に後順位の抵当権が設定されている場合において、甲乙不動産が同時に競売され、共同抵当権者が甲不動産の売却代金の交付による弁済を受けたときは、物上保証人は、乙不動産につき、後順位抵当権者に優先して、順位一番…