一 債務者所有の不動産と物上保証人所有の不動産とを共同抵当の目的として順位を異にする数個の抵当権が設定されている場合において、物上保証人所有の不動産について先に競売がされ、その競落代金の交付により一番抵当権者が弁済を受けたときは、後順位抵当権者は、物上保証人に移転した債務者所有の不動産に対する一番抵当権から優先して弁済を受けることができる。 二 債務者所有の不動産と物上保証人所有の不動産とを共同抵当の目的として順位を異にする数個の抵当権が設定されている場合において、物上保証人所有の不動産について先に競売がされ、その競落代金の交付により一番抵当権者が弁済を受けたときは、後順位抵当権者は、物上保証人に移転した債務者所有の不動産に対する一番抵当権からの優先弁済権を主張するについて登記又は差押を必要としない。
一 債務者所有の不動産と物上保証人所有の不動産とを共同抵当の目的として数個の抵当権が設定され物上保証人所有の不動産について先に競売がされた場合における物上保証人と後順位低当権者との優劣 二 債務者所有の不動産と物上保証人所有の不動産とを共同抵当の目的として数個の抵当権が設定され物上保証人所有の不動産について先に競売がされた場合における後順位抵当権者の優先弁済権と登記又は差押の要否
民法177条,民法304条1項,民法351条,民法372条,民法392条2項
判旨
債務者及び物上保証人所有の不動産に設定された共同抵当権において、物上保証人所有の不動産が先に競売され、一番抵当権者が弁済を受けた場合、物上保証人に代位により移転した一番抵当権に対し、物上保証人側の後順位抵当権者は、登記や差押えなしに優先弁済権を行使できる。
問題の所在(論点)
物上保証人所有の不動産が先順位抵当権の実行により配当された場合において、物上保証人側の後順位抵当権者は、物上保証人が代位取得した「債務者所有不動産上の一番抵当権」から優先弁済を受けられるか。また、その際、登記や差押えが必要か。
規範
物上保証人所有の不動産が先に競売され、一番抵当権者が弁済を受けた場合、民法392条2項後段の趣旨(後順位抵当権者の保護)に照らし、物上保証人に代位により移転した一番抵当権は、物上保証人側の後順位抵当権者の被担保債権を担保するものとなる。後順位抵当権者は、右一番抵当権につき民法372条、304条1項の物上代位と同様に、その順位に従って物上保証人に優先して弁済を受けることができる。この優先弁済権は登記を必要とせず、保全要件としての差押えも不要である。
重要事実
債務者D所有の土地建物と、物上保証人E所有の山林に一番抵当権者F銀行が共同抵当権を設定し、さらに各物件には被上告人らや上告人が後順位抵当権を有していた。先に物上保証人E所有の山林が競売され、F銀行が全額弁済を受けた。EはDへの求償権と代位による一番抵当権を取得し、これをH社に譲渡。上告人はH社からその一部を譲り受け附記登記を了した。その後、D所有の土地建物が競売された際、上告人は元一番抵当権の譲受人として優先配当を主張し、被上告人らと争った。
あてはめ
後順位抵当権者は設定当初から物上保証人所有不動産の担保価値も把握しており、物上保証人も後順位抵当権による負担を甘受している。D所有不動産が先に実行された場合や一括競売された場合との均衡上、物上保証人側の競売という偶然の事情で後順位者が不利になるのは不合理である。したがって、被上告人ら後順位抵当権者は、物上保証人Eから代位による一番抵当権を譲り受けた上告人に対し、登記や差押えなくして優先弁済を主張できる。上告人は登記簿から後順位者の存在を知り得た以上、不測の損害も被らない。
結論
被上告人ら後順位抵当権者は、物上保証人から代位による抵当権を譲り受けた上告人に優先して支払を受けることができる。上告人の請求は認められない。
実務上の射程
物上保証人が存在する共同抵当の異時配当において、後順位抵当権者の期待(担保価値の把握)を保護する重要な判例である。答案上は、物上保証人の代位(民法501条)と後順位者の優先権の優劣が問題となる場面で、392条2項後段の類推適用ないし趣旨を根拠に、後順位者保護の理論構成として用いる。
事件番号: 昭和60(オ)1084 / 裁判年月日: 昭和61年4月18日 / 結論: 棄却
物上保証人所有の甲不動産と債務者所有の乙不動産とを共同抵当の目的とする順位一番の抵当権が設定されているとともに乙不動産に後順位の抵当権が設定されている場合において、甲乙不動産が同時に競売され、共同抵当権者が甲不動産の売却代金の交付による弁済を受けたときは、物上保証人は、乙不動産につき、後順位抵当権者に優先して、順位一番…