一 先取特権者による物上代位権行使の目的となる債権について一般債権者が差押又は仮差押の執行をしたにすぎないときは、そののちに先取特権者が右債権に対し物上代位権を行使することを妨げない。 二 転付命令が第三債務者に送達される時までに転付命令に係る金銭債権について他の債権者が差押、仮差押の執行又は配当要求をした場合でも、転付命令を得た債権者が優先権を有するときは、転付命令はその効力を生じる。 三 差押命令の送達と転付命令の送達とを競合して受けた第三債務者が民事執行法一五六条二項に基づいてした供託は、転付命令が効力を生じているため法律上差押の競合があるとはいえない場合であつても、第三債務者に転付命令の効力の有無についての的確な判断を期待しえない事情があるときは、同項の類推適用により有効である。 四 差押命令の送達と転付命令の送達とを競合して受けた第三債務者のした供託が民事執行法一五六条二項の類推適用により有効である場合において、右供託金について転付命令が効力を生じないとの解釈のもとに配当表が作成されたときは、効力の生じた転付命令を得た債権者は、配当期日における配当異議の申出さらには配当異議の訴えにより転付命令に係る債権につき優先配当を主張して配当表の変更を求めることができる。
一 先取特権者による物上代位権行使の目的となる債権について一般債権者が差押又は仮差押の執行をしたのちの先取特権者による物上代位権の行使 二 優先権を有する債権者の得た転付命令が第三債務者に送達される時までに転付命令に係る金銭債権について他の債権者が差押、仮差押の執行又は配当要求をした場合における転付命令の効力 三 差押命令の送達と転付命令の送達とを競合して受けた第三債務者が民事執行法一五六条二項に基づいてした供託の効力 四 差押命令の送達と転付命令の送達とを競合して受けた第三債務者のした供託に基づき転付命令が効力を生じないとの解釈のもとに配当表が作成された場合と効力の生じた転付命令を得た債権者の不服申立方法
民法304条1項但書,民事執行法90条,民事執行法143条,民事執行法156条2項,民事執行法159条3項,民事執行法178条
判旨
動産の先取特権者が物上代位権を行使して転付命令を得た場合、一般債権者による仮差押えが先行していても、先取特権者は優先権を主張して当該債権を独占的に取得できる。また、第三債務者が供託した場合でも、優先権を有する債権者は配当異議の訴え等を通じて優先配当を求めることが可能である。
問題の所在(論点)
1. 一般債権者による仮差押えが、先取特権者による物上代位権行使(差押え)に先行する場合、先取特権者は優先権を主張できるか(民法304条1項但書の解釈)。 2. 先行する仮差押えがある場合に、物上代位に基づく転付命令は有効か(民事執行法159条3項の適用範囲)。
規範
民法304条1項但書の差押えの趣旨は、目的債権の特定性保持と第三債務者等の不測の損害防止にある。したがって、一般債権者が差押え・仮差押えの執行をしたにすぎない段階では、その後に先取特権者が物上代位権を行使することは妨げられない。また、民事執行法159条3項の制限にかかわらず、優先権を有する債権者が得た転付命令は、先行する仮差押え等があってもその効力を生ずる。
重要事実
上告人は、債務者に対する売掛代金債権に基づき、債務者が第三債務者に対して有する転売代金債権(目的債権)につき、動産先取特権に基づく物上代位権を行使して差押命令及び転付命令を取得した。しかし、これに先立ち、一般債権者である被上告人らは同債権に対して仮差押命令を取得し、その送達は上告人の転付命令の送達より早かった。第三債務者が代金全額を供託したため、執行裁判所は上告人と被上告人らを債権額に応じて按分する配当表を作成した。上告人が優先配当を求めて配当異議を申し立てた事案。
あてはめ
1. 304条1項但書は、払渡・引渡が完了して債務者の一般財産に混入することを防ぐための規定であり、単なる一般債権者による仮差押えの執行は「払渡又は引渡」に含まれない。したがって、上告人の物上代位権行使は妨げられない。 2. 転付命令の独占的効力を制限する民執法159条3項は、優先権のない債権者間の調整規定である。上告人は先取特権という実体法上の優先権を有するため、仮差押え後であっても本件転付命令は有効に効力を生じる。 3. 第三債務者において転付命令の有効性の判断が困難な状況下での供託は有効であり、上告人は配当異議の訴えにより優先配当を主張できる。
結論
上告人は被上告人らに優先して配当を受ける権利を有する。したがって、按分配当を内容とする配当表を、上告人に優先配当を行う内容に変更すべきである。
実務上の射程
物上代位権に基づく差押えと一般債権者の差押えが競合した場合、常に先取特権者が優先することを明示した。答案上、民法304条1項但書の「差押え」の意義を論じる際や、民執法159条3項の例外(優先権ある債権者の転付命令)を論じる際の決定的な根拠となる。
事件番号: 昭和63(オ)1453 / 裁判年月日: 平成5年3月30日 / 結論: 棄却
動産売買の先取特権に基づく物上代位権を有する債権者甲が、物上代位の目的たる債権につき仮差押えをした後、右債権につき債権者乙による差押えがあつたため第三債務者が民事執行法(平成元年法律第九一号による改正前のもの)一五六条二項、一七八条五項に基づく供託をした場合において、甲が右供託前に更に物上代位権の行使として右債権の差押…