抵当権の物上代位の目的となる債権に対する転付命令は,これが第三債務者に送達される時までに抵当権者により当該債権の差押えがなされなかったときは,その効力を妨げられない。
抵当権の物上代位の目的となる債権に対する転付命令の効力
民法304条1項,民法372条,民事執行法159条,民事執行法160条,民事執行法193条
判旨
抵当権者が物上代位権を行使して債権を差し押さえる前に、当該債権に転付命令が第三債務者に送達された場合、転付命令が優先し、抵当権者は優先弁済を主張できない。
問題の所在(論点)
抵当権の目的物である建物が滅失(買収)等して生じた補償金債権に対し、抵当権者が物上代位による差押えを行う前に、一般債権者が当該債権について転付命令を得てこれが第三債務者に送達された場合、どちらが優先するか。
規範
転付命令が第三債務者に送達される時までに、抵当権者が物上代位による差押えをしなかったときは、転付命令の効力を妨げることはできない。差押命令及び転付命令が確定したときは、第三債務者への送達時に被転付債権は差押債権者の債権に充当されたものとみなされ、抵当権者はもはや物上代位による優先権を主張できない。物上代位による差押えも民事執行法上の「差押え」に含まれ、転付命令の独占的満足(民執法159条3項)を妨げる事由として強制執行における差押えと同様に扱うべきだからである。
重要事実
建物所有者Dの債権者である上告人は、Dの第三債務者(愛媛県)に対する建物補償金債権(乙債権)等について差押命令及び転付命令を得た。この転付命令は、平成10年5月7日に第三債務者に送達され、同月20日に確定した。一方、本件建物に抵当権を有していた被上告人らは、物上代位に基づき乙債権を差し押さえたが、その差押命令が第三債務者に送達されたのは同年5月14日であり、上告人の転付命令の送達後であった。
あてはめ
本件において、上告人の転付命令が第三債務者に送達されたのは5月7日である。これに対し、被上告人らによる物上代位に基づく差押命令の送達は5月14日であり、転付命令の送達時(5月7日)において被上告人らは差押えを行っていなかったといえる。したがって、民事執行法159条3項により転付命令の効力は妨げられず、乙債権のうち転付命令に係る部分は上告人に移転し、その債権の弁済に充当されたものとみなされる。その後になされた被上告人らの差押えは、既に上告人に独占的に帰属した債権に対してなされたものであり、優先権を主張することはできない。
結論
転付命令が優先し、抵当権者(被上告人ら)への配当を認めた配当表は、転付債権者の請求に基づき更正されるべきである。
実務上の射程
債権譲渡(対抗要件具備)と物上代位が競合する場合は抵当権が優先する(最判平10.1.30)が、転付命令との関係では本判決により「送達の前後」で決するという明確な基準が示された。答案上は、転付命令が持つ「独占的満足」という強力な効力と、物上代位における「差押え」の要請を比較して論じる際に用いる。
事件番号: 平成13(受)91 / 裁判年月日: 平成13年10月25日 / 結論: 棄却
抵当権に基づき物上代位権を行使する債権者は,他の債権者による債権差押事件に配当要求をすることによって優先弁済を受けることはできない。