動産売買の先取特権に基づく物上代位権を有する債権者甲が、物上代位の目的たる債権につき仮差押えをした後、右債権につき債権者乙による差押えがあつたため第三債務者が民事執行法(平成元年法律第九一号による改正前のもの)一五六条二項、一七八条五項に基づく供託をした場合において、甲が右供託前に更に物上代位権の行使として右債権の差押命令の申立てをしたときであつても、その差押命令が右供託前に第三債務者に送達されない限り、甲は乙による債権差押事件の配当手続において優先弁済を受けることができない。
動産売買の先取特権に基づく物上代位権の行使としての債権の差押命令の申立てと他の債権者による債権差押事件の配当手続における優先弁済
民事執行法154条1項1165条1号,民事執行法193条1項
判旨
動産売買の先取特権者が物上代位権を行使する場合、第三債務者の供託(配当要求の終期)までに差押命令が第三債務者に送達されない限り、優先弁済を受けることはできない。
問題の所在(論点)
物上代位権に基づく差押命令が、第三債務者の供託(配当要求の終期)後に送達された場合であっても、供託前に「申立て」をしていれば優先弁済を受けることができるか。
規範
物上代位権を行使する債権者は、民事執行法上の配当要求の終期(第三債務者による供託時等)までに、差押命令が第三債務者に送達されることを要する。単に差押えの申立てをしただけでは、手続上の意思が明確になったとはいえず、同法上の「差押えをした債権者」等には該当しない。
重要事実
動産売買の先取特権者が、目的物たる債権を仮差押えした後、他の一般債権者による差押えがなされた。第三債務者は民事執行法に基づき当該債権額を供託したが、先取特権者はこの供託前に物上代位に基づく差押命令の申立てを行っていたものの、命令の送達は供託後となった。先取特権者は、他の債権者による差押事件の配当手続において優先弁済を主張した。
あてはめ
先取特権債権者は、第三債務者が供託を行う前に物上代位に基づく差押命令を申し立てている。しかし、差押えの効力発生は送達時であり、申立てのみでは配当を求める意思が手続上明確になっているとはいえない。本件では、供託(配当要求の終期)以前に差押命令が第三債務者に送達されていない以上、民事執行法上の「差押債権者」にも「配当要求をした債権者」にも該当しないと評価される。
結論
先取特権者は優先弁済を受けることができず、配当表の変更を求める請求は棄却される。
実務上の射程
物上代位における「払渡し又は引渡し」前の差押え(民法304条1項但書)の時期制限に加え、民事執行法上の優先権確保のためには、配当要求の終期までの「送達」が必要であることを明確にした。実務上、仮差押えだけでは不十分であり、迅速な本差押えと送達の確認が重要となる。
事件番号: 昭和60(オ)232 / 裁判年月日: 昭和62年4月2日 / 結論: 棄却
動産売買の先取特権に基づく物上代位権を有する債権者は、自ら目的債権を強制執行によつて差し押さえても、他に競合する差押債権者等がある場合は、配当要求の終期までに、担保権を証する文書を提出して、先取特権に基づく配当要求又はこれに準ずる先取特権行使の申出をしなければ、優先弁済を受けることができない。