動産売買の先取特権に基づく物上代位権を有する債権者は、自ら目的債権を強制執行によつて差し押さえても、他に競合する差押債権者等がある場合は、配当要求の終期までに、担保権を証する文書を提出して、先取特権に基づく配当要求又はこれに準ずる先取特権行使の申出をしなければ、優先弁済を受けることができない。
動産売買の先取特権に基づく物上代位権を有する債権者が自ら目的債権を強制執行によつて差し押さえたときに競合する差押債権者等がある場合と優先弁済を受ける方法
民法304条,民事執行法143条,民事執行法154条,民事執行法165条,民事執行法193条
判旨
動産売買の先取特権に基づく物上代位権者は、自ら債権を差し押さえた場合でも、競合する差押債権者が存在するときは、配当要求の終期までに担保権の存在を証する文書を提出して優先権を行使しなければ、優先弁済を受けることができない。
問題の所在(論点)
物上代位権者が自ら強制執行によって目的債権を差し押さえた場合において、他の差押債権者と競合した際、改めて先取特権の存在を証する文書を提出して優先権行使の意思を表示(配当要求等)しなければ、優先弁済を受けることができないか。
規範
物上代位権(民法304条、322条)の行使にあたり、物上代位の目的たる債権を自ら強制執行によって差し押さえた場合であっても、優先弁済を確保するためには、他に競合する差押債権者がいるときは、民事執行法上の配当要求の終期までに、担保権の存在を証する文書を提出して先取特権に基づく配当要求またはこれに準ずる先取特権行使の申出をしなければならない。
重要事実
上告人は、動産売買の先取特権に基づき、その目的物から生じた債権(物上代位の目的たる債権)を自ら強制執行の手続によって差し押さえた。しかし、当該手続には他に競合する差押債権者が存在していた。上告人は、配当要求の終期までに担保権の存在を証する文書を提出するなど、先取特権に基づく具体的な優先権行使の手続(配当要求等)を執らなかった。このため、作成された配当表において上告人の優先受領が認められず、配当表の是非が争点となった。
あてはめ
本件において、上告人は目的債権を自ら差し押さえているものの、その執行手続は一般の強制執行として行われたものである。他に差押債権者が競合している以上、執行裁判所が各債権者の優先順位を判断するためには、上告人が単なる一般債権者ではなく、優先弁済権を有する担保権者であることを示す必要がある。上告人が配当要求の終期までに担保権の存在を証する文書を提出しなかった以上、手続上、先取特権に基づく優先弁済権の行使があったとは認められない。したがって、配当表において優先弁済を認めなかった判断に過誤はないといえる。
結論
優先弁済を受けることはできない。自ら差し押さえた場合であっても、競合者がいるときは配当要求の終期までに担保権行使の申出が必要である。
実務上の射程
物上代位権者が「差押え」(民法304条1項但書)を自ら行う際、それが一般の強制執行の手続によるものである場合は、優先権を証する文書を提出しない限り、実務上は単なる一般債権者として扱われる。答案上では、物上代位の行使方法と配当手続の規律(民事執行法)が交錯する場面で、債権者の権利行使の懈怠を指摘する際に活用できる。
事件番号: 昭和63(オ)1453 / 裁判年月日: 平成5年3月30日 / 結論: 棄却
動産売買の先取特権に基づく物上代位権を有する債権者甲が、物上代位の目的たる債権につき仮差押えをした後、右債権につき債権者乙による差押えがあつたため第三債務者が民事執行法(平成元年法律第九一号による改正前のもの)一五六条二項、一七八条五項に基づく供託をした場合において、甲が右供託前に更に物上代位権の行使として右債権の差押…