判旨
約束手形の振出人に対する手形金請求において、支払呈示の有無は、手形金および支払呈示期間経過後の遅延損害金の請求の当否には影響しない。
問題の所在(論点)
約束手形の振出人に対する手形金および訴状送達後の遅延損害金の請求において、適法な支払呈示の事実は必要か。
規範
約束手形の振出人は主債務者であるから、支払呈示期間内に支払呈示がなかったとしても、手形債務そのものを免れることはない。また、支払呈示は振出人を遅滞に陥らせるための要件(手形法78条1項、70条、38条等参照)ではあるが、訴状の送達等により履行の請求がなされた場合には、適法な支払呈示の有無にかかわらず、その翌日から遅延損害金が発生する。
重要事実
被上告人が、約束手形の振出人である上告人に対し、手形金の一部および本訴状送達の翌日からの遅延利息の支払を求めて提訴した。これに対し、上告人は適法な支払呈示がなかった旨を主張して争った。
あてはめ
本件において、被上告人が求めているのは手形金の一部および「本訴状送達の翌日からの」遅延利息である。振出人は手形の主債務者であり、支払呈示の有無によってその支払義務を免れるものではない。また、遅延損害金の起算点については、適法な支払呈示がなかったとしても、訴状の送達によって履行の請求がなされた以上、その翌日から遅滞の責任を負うことになる。したがって、支払呈示の有無は本訴請求の当否に関係がないといえる。
結論
振出人に対する手形金および訴状送達後の遅延損害金の請求において、支払呈示の有無は結論に影響しない。上告棄却。
実務上の射程
振出人(および為替手形の引受人)に対する遡及ではない主債務の履行請求において、支払呈示の欠如が抗弁となり得ないことを確認する実務上重要な判断である。ただし、支払呈示期間内の遅延損害金や、裏書人等に対する遡及権の保全を問題とする場合には、依然として支払呈示の有無が決定的に重要となる点に注意が必要である。
事件番号: 昭和27(オ)252 / 裁判年月日: 昭和29年3月19日 / 結論: 棄却
甲が約束手形の所持人であつて真の債権者であることを振出人乙が知つている場合に、甲が満期当日支払場所において乙から内金の支払を受け、手形金残額については見返りとして訴外人振出の手形を受け取つた事実がある以上、右手形については当事者間に手形の呈示があつたと同一の効力を生じたものと認めるのが相当である。
事件番号: 昭和54(オ)1375 / 裁判年月日: 昭和55年3月27日 / 結論: 棄却
約束手形の支払呈示期間内に適法な呈示がなかつたときは、その後に呈示されても、振出人は、手形法所定の利息の支払義務を負わない。