判旨
上告審において、原審で主張しなかった新たな攻撃防御方法(相殺の抗弁)を提出することは、法律審としての性質上、適法な上告理由には該当しない。
問題の所在(論点)
事実審である原審において主張しなかった相殺の抗弁を、法律審である上告審において新たに主張することが、適法な上告理由として認められるか。
規範
上告審は法律審であり、原則として原判決時点における事実関係を前提に判断を下すべきものである。したがって、事実認定を必要とする新たな攻撃防御方法を上告審で初めて主張することは許されない。
重要事実
上告人は、原審(控訴審)までの審理において相殺の抗弁を提出していなかったが、上告審に至って初めて、自らが有する債権をもって被上告人の債権と相殺する旨の主張を行った。
あてはめ
上告審は、原審が確定した事実を前提として判決の適法性を審査する場である。本件において上告人が主張する相殺の事実は、原審では何ら提出されておらず、その存否について事実審による審理・判断を経ていない。このような新たな主張は法律審の審理範囲を逸脱するものであり、不適法と言わざるを得ない。
結論
原審で主張しなかった相殺の抗弁を上告審で新たに主張することは認められず、本件上告は棄却される。
実務上の射程
法律審における新主張禁止の原則を確認するものである。実務上、相殺の抗弁に限らず、新たな事実主張や証拠申出を上告審で行うことはできないため、事実審において漏れなく主張を尽くす必要がある。
事件番号: 昭和32(オ)119 / 裁判年月日: 昭和33年5月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由が原判決の認定した事実に反する独自の主張に基づいている場合、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:上告人が、原審において認定された事実とは異なる事実を前提として、原判決の判断の不当性を主張して上告を申し立てた。 第2 問題の所在(論点):原判決の事実認定に反する事実に基づき原判…