判旨
憲法25条1項は国に対し健康で文化的な最低限度の生活を営ませる義務を課すにとどまり、個々の国民に具体的・現実的な権利を付与するものではない。また、憲法21条の表現の自由は、私法関係等に基づく義務により制限を受け得る。
問題の所在(論点)
憲法25条1項に基づき国民が国家に対し直接に具体的な権利を主張できるか。また、私法上の雇用関係において、憲法21条が保障する自由が制限されることは許されるか。
規範
憲法25条1項は、国民一般に対し、国政上の任務として健康で文化的な最低限度の生活を保障する責務を国に負わせたものであり、個々の国民に対して直接に具体的・現実的な権利を保障したものではない。また、憲法21条が保障する自由は、自己の自由意思に基づく特別の私法関係における義務によって制限を受けることがある。
重要事実
会社側の整理基準に基づき、欠勤・遅参・早退が多い者(基準6該当)や、業務に非協力的で他人の生産意欲を阻害する者(基準4・16該当)として従業員らが解雇された。これに対し、抗告人らは、当該解雇が憲法25条(生存権)や憲法21条(表現・結社の自由)等に違反し無効であると主張して特別抗告を申し立てた。
あてはめ
憲法25条に関する主張について、同条は国の政治的責務を規定したものであり、個人の具体的権利を認める趣旨ではない(プログラム規定説的解釈)。本件解雇の有効性判断において、同条を直接の根拠として権利主張をすることはできない。憲法21条については、抗告人が共産党細胞責任者として行動したことが、会社の整理基準における「業務への非協力」「生産意欲の阻害」に該当すると判断されたものであり、私法上の労働契約に基づく義務の範囲内での制約は憲法違反とならない。
結論
本件各抗告を棄却する。憲法25条の具体的権利性は否定され、また私法上の義務による憲法上の自由の制限は容認される。
事件番号: 昭和29(ク)223 / 裁判年月日: 昭和35年4月18日 / 結論: 棄却
一 民事上の法律行為の効力は、特別の規定がないかぎり行為当時の法令に照らし判定すべきものである。 二 昭和二五年七月一八日付連合国最高司令官の内閣総理大臣あて書簡は、公共的報道機関にとどまらずその他の重要産業から共産党員またはその支持者を排除すべきことを要請する連合国最高司令官の指示と解すべきである。
実務上の射程
生存権のプログラム規定説を示す代表的判例の一つ(朝日訴訟・堀木訴訟等に先行)。また、私人間における憲法の効力(直接適用否定)を示唆する判例として、三菱樹脂事件判決等へ繋がる重要な先例である。
事件番号: 昭和28(ク)149 / 裁判年月日: 昭和28年7月22日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、旧民事訴訟法419条の2(現行336条1項)に定められた憲法判断を不当とする場合に限定される。実質的に単なる法令解釈の不当を主張するものは、不適法として却下される。 第1 事案の概要:抗告人は、原抗告審の決定を不服として最高裁判所に抗告を申し立てた。抗告人はその理由におい…
事件番号: 昭和29(ク)53 / 裁判年月日: 昭和29年5月21日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法上特に許された場合に限られ、民事事件においては、原決定の憲法判断の不当を理由とする特別抗告のみが認められる。 第1 事案の概要:抗告人は、仮処分により保全すべき権利について疎明がないとした原決定を不服として、最高裁判所に対し抗告を申し立てた。その際…
事件番号: 昭和24(ク)32 / 裁判年月日: 昭和26年8月28日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】憲法25条は国家の国政上の責務を規定したものであり、国民に具体的権利を付与したものではない。また、解雇等による事実上の就業不能は、憲法22条1項の保障する職業選択の自由を侵害するものではない。 第1 事案の概要:抗告人は、Bの従業員としての地位等に関し、仮処分申請を行ったが、原審において却下された…
事件番号: 昭和25(ク)141 / 裁判年月日: 昭和26年4月4日 / 結論: 棄却
一 憲法第二一条所定の言論、出版その他一切の表現の自由は、公共の福祉に反し得ないばかりでなく、自己の自由意思に基ずく特別な公法関係上又は私法関係上の義務によつて制限を受ける。 二 特別抗告理由は理由書自体に記載すべきであつて、原審抗告理由書の記載を引用することは許されない。