判旨
憲法25条は国家の国政上の責務を規定したものであり、国民に具体的権利を付与したものではない。また、解雇等による事実上の就業不能は、憲法22条1項の保障する職業選択の自由を侵害するものではない。
問題の所在(論点)
1.憲法25条に基づき、個人が直接的に具体的権利を主張できるか。2.仮処分が認められないことにより事実上職に就けない状態が、憲法22条1項の職業選択の自由を侵害するか。
規範
1.憲法25条は、国家が国民一般に対して概括的に健康で文化的な最低限度の生活を営ましめる責務を負担し、これを国政上の任務とすべき旨を規定したにとどまり、直接個々の国民に対して具体的現実的にかかる権利を付与したものではない。2.憲法22条1項の職業選択の自由は、特定の職に就く自由を保障するものではあるが、相手方に対し使用を強制したり、解雇を絶対的に禁止したりすることを保障するものではない。
重要事実
抗告人は、Bの従業員としての地位等に関し、仮処分申請を行ったが、原審において却下された。これに対し抗告人は、当該却下決定が(1)憲法25条の生存権、(2)裁判を受ける権利、(3)憲法22条1項の職業選択の自由を侵害するものであると主張して特別抗告を申し立てた。なお、抗告人は訴訟上の救助を受けて現に本訴を遂行中であった。
あてはめ
1.憲法25条は抽象的な国政上の任務を定めたに過ぎないため、原審が抗告を却下したことが同条に違反することはない。2.裁判を受ける権利について、抗告人は現に訴訟上の救助を受けて本訴を遂行しており、原決定によって訴訟遂行ができなくなるとの主張は前提を欠く。3.職業選択の自由について、抗告人が特定の職を選択する自由自体は害されていない。相手方が使用を承諾しないことや解雇することによって事実上その職に就けないことは、憲法の保障する「選択の自由」とは無関係である。
結論
本件抗告は憲法違反の主張に理由がないため、却下されるべきである。
事件番号: 昭和25(ク)40 / 裁判年月日: 昭和26年6月29日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所への抗告が許されるのは、憲法違反を理由とする場合に限られる。単なる法令解釈の不当を憲法違反と主張することは、適法な抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:抗告人は、相手方の占有を解いて執行吏に保管させ、現状変更を禁止する仮処分決定を得ていた。その後、相手方が現状を変更したことを理由に…
実務上の射程
憲法25条のプログラム規定説的な性格を明示した初期の重要判例。生存権の具体的権利性の否定や、職業選択の自由が私人間における雇用強制までを意味しないことを論証する際の基礎となる。
事件番号: 昭和24(ク)30 / 裁判年月日: 昭和24年6月28日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、訴訟法上特に最高裁判所に申し立てることが許された場合を除き、申し立てることはできない。 第1 事案の概要:抗告人が、特定の訴訟法上の規定の根拠がないままに、最高裁判所に対して抗告を申し立てた事案である。 第2 問題の所在(論点):訴訟法上に特別の規定がない場合に、最高裁判…
事件番号: 昭和36(テ)25 / 裁判年月日: 昭和36年9月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法32条は裁判を受ける権利を規定するが、裁判所の組織、権限、審級等の具体的制度は法律による立法政策の問題である。したがって、仮差押や仮処分に関する判決について通常の上告を認めない民事訴訟法の規定は同条に違反しない。 第1 事案の概要:上告人は、仮差押または仮処分に関してなされた判決に対し、通常の…
事件番号: 昭和24(ク)75 / 裁判年月日: 昭和26年2月6日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、民事訴訟法上の特別抗告(憲法違反等を理由とするもの)に限られ、それ以外の理由による抗告は不適法として却下される。 第1 事案の概要:抗告人が最高裁判所に対して抗告を申し立てた事案。抗告人が主張した抗告理由は、原決定において法律・命令・規則又は処分が憲法に適合するか否かにつ…
事件番号: 昭和26(ク)75 / 裁判年月日: 昭和26年6月26日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法上特に許容された場合に限られ、民事事件においては憲法違反を理由とする特別抗告のみが認められる。 第1 事案の概要:抗告人は、何らかの民事事件の決定に対し、最高裁判所へ抗告を申し立てた。しかし、その抗告理由は、原決定に憲法違反があることを主張するもの…