一 民事上の法律行為の効力は、特別の規定がないかぎり行為当時の法令に照らし判定すべきものである。 二 昭和二五年七月一八日付連合国最高司令官の内閣総理大臣あて書簡は、公共的報道機関にとどまらずその他の重要産業から共産党員またはその支持者を排除すべきことを要請する連合国最高司令官の指示と解すべきである。
一 民事上の法律行為の効力の判定の基準時 二 昭和二五年七月一八日付連合国最高司令官の内閣総理大臣あて書簡の趣旨
民法第1編第4章(90条以下),昭和25年7月18日付連合国最高司令官の内閣総理大臣あて書簡
判旨
占領下における連合国最高司令官の指示は、わが国の国家機関及び国民に対し法規としての効力を有し、これに基づく解雇の効力は平和条約発効後も失われない。また、当該指示の対象は報道機関に限らず、重要産業一般に及ぶと解するのが相当である。
問題の所在(論点)
1. 占領下における連合国最高司令官の指示が、わが国の国内法上の法規としての効力を有するか。 2. 連合国最高司令官の指示に基づくなされた解雇の効力は、平和条約発効後(占領終了後)においても維持されるか。 3. 当該指示の対象範囲に「重要産業」が含まれるか。
規範
1. 民事上の法律行為の効力は、原則として行為当時の法令に照らして判定すべきである。 2. 占領下における連合国最高司令官の指示は、わが国の法令に優先する法規としての効力を有する。 3. 当該指示に基づいてなされた行為の効力は、事後に当該指示が失効したとしても、別段の規定がない限り影響を受けない。
重要事実
日本共産党員である抗告人D及びEは、占領軍によるいわゆるレッド・パージの一環として、連合国最高司令官(GHQ)の指示に基づき勤務先から解雇された。抗告人らは、当該指示が法規としての効力を持たないこと、また平和条約の発効によって当該指示の根拠が失われたこと等を理由に、解雇の無効を訴えて抗告した。
事件番号: 昭和28(ク)79 / 裁判年月日: 昭和29年6月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法25条1項は国に対し健康で文化的な最低限度の生活を営ませる義務を課すにとどまり、個々の国民に具体的・現実的な権利を付与するものではない。また、憲法21条の表現の自由は、私法関係等に基づく義務により制限を受け得る。 第1 事案の概要:会社側の整理基準に基づき、欠勤・遅参・早退が多い者(基準6該当…
あてはめ
1. 降伏文書等の規定により、占領下のわが国は最高司令官の命令に服従する義務があり、指示に抵触する国内法令の適用は排除されるため、当該指示は法規としての効力を有する。 2. 本件解雇は当時の法規たる最高司令官の指示に基づいてなされたものであり、法律行為の効力は行為当時の法令により決すべきであるから、その後の平和条約発効(指示の失効)により遡及的に無効となることはない。 3. 最高司令官の声明や書簡、さらには最高裁判所に対して直接なされた解釈指示に照らせば、当該指示は公共的報道機関のみならず「その他の重要産業」をも含むものと認められる。
結論
本件解雇は有効である。最高司令官の指示は法規としての権威を持ち、これに基づく占領中の行為の効力は、占領終了後も維持される。
実務上の射程
連合国高官の指示という特殊な性質の規範が国内法を上書きした「レッド・パージ」に関するリーディングケースである。現代の答案作成においては、公序良俗(民法90条)の解釈において当時の強行法規的性格を考慮する際の前提知識として活用されるが、現在は特殊な歴史的状況下における判断として位置づけられる。
事件番号: 昭和26(ク)114 / 裁判年月日: 昭和27年4月2日 / 結論: その他
一 報道機関が、その従業員を共産党員またはその支持者たることを理由として解雇した場合には、その解雇は、昭和二五年七月一八日付連合国最高司令官より内閣総理大臣あて書簡による指示に従つたものとして有効である。 二 報道機関が、その従業員を、共産党員またはその支持者たることを理由として解雇した場合には、その解雇の効力に関する…
事件番号: 昭和25(ク)141 / 裁判年月日: 昭和26年4月4日 / 結論: 棄却
一 憲法第二一条所定の言論、出版その他一切の表現の自由は、公共の福祉に反し得ないばかりでなく、自己の自由意思に基ずく特別な公法関係上又は私法関係上の義務によつて制限を受ける。 二 特別抗告理由は理由書自体に記載すべきであつて、原審抗告理由書の記載を引用することは許されない。
事件番号: 昭和29(ク)53 / 裁判年月日: 昭和29年5月21日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法上特に許された場合に限られ、民事事件においては、原決定の憲法判断の不当を理由とする特別抗告のみが認められる。 第1 事案の概要:抗告人は、仮処分により保全すべき権利について疎明がないとした原決定を不服として、最高裁判所に対し抗告を申し立てた。その際…