一 報道機関が、その従業員を共産党員またはその支持者たることを理由として解雇した場合には、その解雇は、昭和二五年七月一八日付連合国最高司令官より内閣総理大臣あて書簡による指示に従つたものとして有効である。 二 報道機関が、その従業員を、共産党員またはその支持者たることを理由として解雇した場合には、その解雇の効力に関する争については、日本の裁判所において裁判権を有する。 三 労働組合は、特段の事由がないかぎり、共産党員またはその支持者たることを理由とする報道機関の従業員の解雇の効力を停止すべき仮処分申請事件につき当事者適格を有しない。
一 共産党員またはその支持者たることを理由とする報道機関の従業員の解雇の効力 二 共産党員またはその支持者たることを理由とする報道機関の従業員の解雇の効力に関する訴訟の裁判権 三 共産党員またはその支持者たることを理由とする報道機関の従業員の解雇の効力を停止する仮処分申請事件と労働組合の当事者適格
アカハタ及びその五継紙並に同類紙の無期限発行停止に関する昭和25年7月18日付連合国最高司令官より内閣総理大臣あて書簡,昭和20年9月2日降伏文書5項,同日連合国最高司令官指令1号12項,民訴法760条
判旨
連合国最高司令官の指示に基づく共産主義者等の排除(レッドパージ)は、ポツダム宣言受諾に伴う降伏文書の義務を根拠とする。この指示に抵触する国内法令は、憲法を含めその適用が排除されるため、当該指示に従ってなされた解雇は有効である。
問題の所在(論点)
連合国最高司令官の指示に基づきなされた解雇について、憲法や労働関係法令などの国内法規を適用してその無効を主張できるか(占領軍の指示と国内法の優越関係)。
規範
日本の国家機関及び国民が連合国最高司令官の発する一切の命令・指示に服従すべき義務(降伏文書5項等)を有することに鑑み、連合国最高司令官の指示は国内法令に優先する。したがって、日本の法令は右指示に抵触する限りにおいてその適用を排除される。
重要事実
昭和25年、連合国最高司令官(GHQ)は内閣総理大臣に対し、共産主義者が公的報道機関を利用して破壊的宣伝を行うことを阻止するため、これらを排除すべき趣旨の書簡(マッカーサー書簡)を送付した。これに基づき、報道機関である相手方会社が、従業員である抗告人ら(共産主義者等)に対してなした解雇の効力が争われた。
あてはめ
マッカーサー書簡は、公的報道機関から共産主義者等を排除すべきことを要請・指示したものであり、これは全国家機関及び国民を拘束する。抗告人らが主張する憲法、労働基準法、労働組合法等の国内法規や労働協約は、右指示と抵触する範囲においてその適用が排除される。したがって、本件解雇は右指示に従ってなされたものとして、国内法上の手続きや権利保障の有無にかかわらず、法律上の効力を有するといえる。
結論
本件解雇は有効であり、解雇無効を前提とする仮処分申請は認められない。
実務上の射程
GHQ占領下の特殊な法的状況における判断であり、憲法を含む国内法の適用が全面的に排除される例外的な事案である。現代の司法試験においては、日本国憲法の最高法規性(98条)の例外としての歴史的意義や、憲法改正手続によらない実質的な憲法停止の事例として理解される。
事件番号: 昭和26(ク)75 / 裁判年月日: 昭和26年6月26日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法上特に許容された場合に限られ、民事事件においては憲法違反を理由とする特別抗告のみが認められる。 第1 事案の概要:抗告人は、何らかの民事事件の決定に対し、最高裁判所へ抗告を申し立てた。しかし、その抗告理由は、原決定に憲法違反があることを主張するもの…
事件番号: 昭和24(ク)75 / 裁判年月日: 昭和26年2月6日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、民事訴訟法上の特別抗告(憲法違反等を理由とするもの)に限られ、それ以外の理由による抗告は不適法として却下される。 第1 事案の概要:抗告人が最高裁判所に対して抗告を申し立てた事案。抗告人が主張した抗告理由は、原決定において法律・命令・規則又は処分が憲法に適合するか否かにつ…
事件番号: 昭和25(ク)41 / 裁判年月日: 昭和26年6月20日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法上特に許された場合に限られ、民事事件では憲法判断の不当を理由とする特別抗告のみが認められる。 第1 事案の概要:抗告人が、原決定に対して最高裁判所に抗告を申し立てた事案。抗告理由の第一点は憲法判断に関するものではなく、第二点は憲法違反を主張する形式…
事件番号: 昭和29(ク)223 / 裁判年月日: 昭和35年4月18日 / 結論: 棄却
一 民事上の法律行為の効力は、特別の規定がないかぎり行為当時の法令に照らし判定すべきものである。 二 昭和二五年七月一八日付連合国最高司令官の内閣総理大臣あて書簡は、公共的報道機関にとどまらずその他の重要産業から共産党員またはその支持者を排除すべきことを要請する連合国最高司令官の指示と解すべきである。