判旨
連合国最高司令官の要請に基づく共産主義者等の排除(レッド・パージ)は、日本国憲法及びその他の法令に優先する効力を有し、これに基づく解雇は正当である。共産主義者又はその支持者であること自体を理由とする解雇は、憲法違反や公序良俗違反の問題を生じさせず、有効と解される。
問題の所在(論点)
連合国最高司令官の指示に基づく共産主義者等の解雇(レッド・パージ)について、日本国憲法や労働関係法令の適用が排除されるか。また、共産主義者であること自体を理由とする解雇は有効か。
規範
連合国最高司令官から特定の者(共産主義者及びその支持者)を公共的機関等から排除するよう要請する指示があった場合、日本の憲法その他の法令は、当該指示に抵触する限りにおいてその適用を排除される。したがって、当該指示に基づく解雇については、思想信条の自由を規定する憲法や、解雇権濫用を制限する労働法理の適用は制限され、指示への適合性のみが判断基準となる。
重要事実
公共の報道機関であった相手方(B)は、連合国最高司令官(SCAP)による「共産主義者及びその支持者を公共の報道機関から排除することを要請する指示」を受け、従業員である上告人等を解雇した。上告人等は、この解雇が思想信条の自由を保障する憲法や労働基準法に違反し、無効であると主張して争った。なお、上告人の一人には、過去の別個の理由による解雇について従業員たる仮の地位を認める仮処分がなされていたが、本件解雇はそれとは別の新たな理由に基づくものであった。
あてはめ
本件解雇は、SCAPによる共産主義者排除の指示に基づいてなされたことが記録上明らかである。この指示は占領下の特殊な法的地位に基づき、日本の国内法(憲法・労働基準法等)に優先する効力を有する。したがって、上告人らが共産主義者またはその同調者(支持者)である限り、党の暴力性の有無や個人の責任の程度といった国内法上の論理を問うまでもなく、当該指示に基づき「共産主義者等であること自体」を理由としてなされた解雇は正当化される。また、先行する仮処分決定も、別個の理由に基づく本件解雇の効力を妨げるものではない。
結論
本件解雇は有効である。SCAPの指示に基づく限り、日本の国内法令違反を理由にその効力を否定することはできない。
事件番号: 昭和26(ク)114 / 裁判年月日: 昭和27年4月2日 / 結論: その他
一 報道機関が、その従業員を共産党員またはその支持者たることを理由として解雇した場合には、その解雇は、昭和二五年七月一八日付連合国最高司令官より内閣総理大臣あて書簡による指示に従つたものとして有効である。 二 報道機関が、その従業員を、共産党員またはその支持者たることを理由として解雇した場合には、その解雇の効力に関する…
実務上の射程
占領下という特殊な法状況下における判例であり、現在の憲法・労働法下で直接の規範として機能するものではない。しかし、国家的な緊急事態や超法規的な指示が国内法の適用を排除し得るかという統治機構上の限界を示す事例として、あるいは思想信条を理由とする解雇の歴史的文脈を理解する上での参照価値がある。
事件番号: 昭和29(ク)223 / 裁判年月日: 昭和35年4月18日 / 結論: 棄却
一 民事上の法律行為の効力は、特別の規定がないかぎり行為当時の法令に照らし判定すべきものである。 二 昭和二五年七月一八日付連合国最高司令官の内閣総理大臣あて書簡は、公共的報道機関にとどまらずその他の重要産業から共産党員またはその支持者を排除すべきことを要請する連合国最高司令官の指示と解すべきである。