会社が極度の経営不振に陥り、企業到壊の寸前に追い追まれたため、企業の再建の方策として人員整理を含む経営方針を樹立し、右協約条項に基き組合側と協議を重ねたが、人員整理を内容とする企業再建方策が当時の状勢の下においては会社としてはやむを得ない措置であり、かつ早急にこれを実施する必要に迫られていると認められるにかかわらず、組合側があくまでも人員整理の方針に反対し、この方針に応じなければ協議に応じないとする態度を固執したため、協議の続行を断念せざるを得なかつた場合には、会社が一方的に人員整理基準を定め、これに基き人員整理を実施しても、右協約の定めに違反するものではない。
「組合は経営権が会社にあることを確認する。但し会社は経営の方針、人事の基準……等経営の基本に関する事項については……組合又は連合会と協議決定する。前項の人事とは従業員の採用、解雇、異動、休職、任免及びこれらに関連する事項をいう。」旨の労働協約の趣旨
労働組合法16条
判旨
経営の基本に関する事項を組合と協議決定すると定める労働協約であっても、会社が誠実に協議を尽くしたにもかかわらず組合が反対を固執し、かつ当該措置が経営上必要不可欠な場合には、会社による一方的な実施は許される。
問題の所在(論点)
労働協約において、人事や経営の基本事項について組合との「協議決定」を要すると定められている場合、組合の同意が得られない状況下で会社が一方的に人員整理等の措置を行うことは可能か(協約の解釈と一方的措置の許容性)。
規範
労働協約に「経営の基本に関する事項を組合と協議決定する」旨の条項(債務的効力)がある場合でも、それは独断専行を避け相互の理解を深める趣旨であり、いかなる場合も会社の一方的決定を許さないものではない。したがって、①当該経営上の措置が会社にとって必要不可欠であり、かつ、②組合の了解を得るために会社として尽くすべき処置を講じたにもかかわらず了解を得られなかった場合には、会社が一方的に当該措置を実施することは協約に違反しない。
事件番号: 昭和27(オ)796 / 裁判年月日: 昭和30年4月15日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】新株引受契約の一部が無効であっても、特段の事情がない限り増資(新株発行)全体の無効を来すものではない。したがって、増資無効を主張することなく、個別の新株引受契約の無効のみを主張することは許容される。 第1 事案の概要:上告人らは、株式会社Dと被上告人との間で締結された新株引受契約(増資新株1万50…
重要事実
会社は極度の経営不振により倒産寸前の状態にあり、企業再建のため人員整理を含む新たな経営方針を樹立した。労働協約には人事等の経営事項について組合と「協議決定」する旨の定めがあったため、会社は組合と協議を重ねたが、組合側は人員整理そのものに絶対反対し、方針を改めない限り協議に応じない態度を固執した。そのため、会社は協議継続を断念し、一方的に人員整理を断行した。
あてはめ
まず、本件人員整理は企業倒壊を免れるための再建方策であり、当時の情勢下で会社にとって「必要やむを得ない措置」であったといえる(要件①充足)。また、会社は協約に基づき組合と協議を重ねたが、組合側が人員整理自体に反対し協議を拒絶する態度を固執したため、会社としては「尽くすべき処置を講じた」が了解を得るに至らなかったものと解される(要件②充足)。以上の事情の下では、会社が一方的に人員整理基準を定めて実施したとしても、直ちに協約違反とはならない。
結論
本件会社が行った一方的な人員整理は、労働協約に違反するものではなく、有効である。上告を棄却する。
実務上の射程
経営協議会での合意を要件とするいわゆる「同意条項」がある場合でも、組合が不当に拒否権を行使しているとみなせる状況(デッドロック状態)においては、経営上の必要性を根拠に会社の単独決定が認められる余地を示した。司法試験においては、解雇の有効性や労働協約の債務的効力の限界を論じる際、信義則上の観点から本規範を引用できる。
事件番号: 昭和26(オ)196 / 裁判年月日: 昭和28年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】仮の地位を定める仮処分において、疎明が不十分な場合に疎明に代えて保証を立てさせて仮処分を命ずることは許容されるが、裁判所が常にその義務を負うものではない。 第1 事案の概要:上告人は、仮の地位を定める仮処分の申立てを行ったが、原審において疎明不十分を理由に退けられたものと解される。これに対し上告人…