判旨
新株引受契約の一部が無効であっても、特段の事情がない限り増資(新株発行)全体の無効を来すものではない。したがって、増資無効を主張することなく、個別の新株引受契約の無効のみを主張することは許容される。
問題の所在(論点)
個別の新株引受契約の無効が、当然に増資(新株発行)全体の無効をもたらすか。また、増資無効を主張せずに新株引受契約の無効のみを訴求することの可否。
規範
新株発行の手続きにおいて、発行される株式の一部について引受契約が無効であったとしても、特段の事情がない限り、そのことによって当然に増資(新株発行)全体の効力が否定されるものではない。
重要事実
上告人らは、株式会社Dと被上告人との間で締結された新株引受契約(増資新株1万5000株のうち5950株分)が無効であることを前提として、仮処分申請を行った。これに対し原審は、引受契約が無効であれば増資自体の無効を招くはずであるから、増資無効を主張せずに引受無効のみを主張することは許されないという形式的理由により、実質的な審理を行わず仮処分申請を却下した。
あてはめ
増資において一部の株式引受が無効となった場合でも、それが直ちに増資全体の効力に影響を及ぼすと解すべき「特段の事情」がない限り、増資全体が無効になるわけではない。本件では、1万5000株のうち5950株の引受が無効であるとの主張に対し、原審は増資全体の無効を伴わない限り主張し得ないとの誤った前提に立ち、引受契約の存否や効力に関する疎明資料を審理しなかった。この判断には、審理不尽の違法がある。
結論
一部の引受無効が当然に増資無効を招くわけではないため、引受契約無効の主張は独立して可能である。原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
事件番号: 昭和27(オ)797 / 裁判年月日: 昭和30年4月19日 / 結論: 破棄差戻
資本金二五万円(一株の金額五〇円株式総数五〇〇〇株)の株式会社の増資による増加資本の額が金七五万円(一株の金額五〇円株式数一五〇〇〇株)である場合において、新株式五九五〇株の引受の欠缺があつても、特別の事情のない限り右引受の欠缺は取締約の引受払込の責任により補充せられるものと見るべきであつて、直ちに資本増加の無効を来す…
新株発行無効の訴え(会社法828条1項2号)という組織法上の訴えを待つまでもなく、個別の引受契約の効力を争うことができることを示した。答案上は、発行手続きの瑕疵が一部の株主に限定される場合、発行全体の無効原因とするか、当該株主との引受関係のみを無効とするかの区別において本判旨の考え方が参考になる。
事件番号: 昭和27(オ)445 / 裁判年月日: 昭和29年7月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】仮処分異議手続において、裁判所は債権者が主張する借地権の存否を判断するため、債務者の抗弁に基づき賃貸借の更新拒絶に関する正当事由の有無を審判することができる。 第1 事案の概要:債権者が借地権の存在を主張して仮処分を申し立てたのに対し、債務者は賃貸借契約の更新を拒絶する正当事由がある旨を抗弁として…