判旨
金銭貸借において、旧利息制限法の制限を超える遅延損害金の約定であっても、営業資金の貸付けであり、かつ公序良俗に反すると認められる特段の事情がない限り、民法90条に違反して無効とはならない。
問題の所在(論点)
旧利息制限法の適用を受けない商事貸付けにおいて、年利84%相当という高率の遅延損害金の約定が、民法90条(公序良俗)に違反して無効となるか。
規範
金銭貸借に伴う遅延損害金の特約が民法90条に違反して無効となるか否かは、当該貸付けの目的、利率の程度、およびその他の諸事情を総合して判断すべきである。特に、営業のための資金として貸し付けられ、旧利息制限法5条の適用がない場合には、直ちに公序良俗違反とはいえず、当該特約を無効とするような特別の事情の主張・立証がない限り、その有効性を肯定すべきである。
重要事実
被上告人(債権者)は、上告人A1(債務者)に対し、昭和24年6月13日に10万円を貸し付けた。その際、上告人A2を連帯保証人とし、利息および遅延損害金の割合を「金1万円につき1ヶ月金700円(年利84%相当)」、弁済期を同年7月25日と定めた。この貸付金は、上告人A1が運送業を開業するための資金として、営業のために貸し付けられたものであった。上告人側は、当該遅延損害金の約定が民法90条に違反し無効であると主張した。
あてはめ
本件貸付けは、運送業を開業するための営業資金としてなされたものであり、当時の旧利息制限法5条(商事制限の例外)の規定に照らし、同法による制限を受けない性質のものである。また、約定された「1万円につき1ヶ月700円」という損害金の割合は、営業資金の貸借という文脈において、直ちに公序良俗に反すると断定できるほど過当なものとは認められない。加えて、原審において本件特約を無効とするに足りる「特別の事情」についての具体的な主張・立証もなされていない。
結論
本件遅延損害金の特約は、民法90条に違反するものとは認められず、有効である。したがって、元本および約定の割合による損害金の支払義務を認めた原判決は正当である。
実務上の射程
利息制限法が現行制度となった今日では、同法を超過する利息・損害金の約定は同法により無効となるため、民法90条を持ち出す必要性は低い。しかし、利息制限法等の強行法規の適用がない領域(自由化された利率等)において、暴利行為を理由に契約の効力を否定しようとする際の「特別の事情」の要否や、営業上の貸付けであることの考慮といった判断枠組みとして参照し得る。
事件番号: 昭和28(オ)1230 / 裁判年月日: 昭和30年6月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】損害金月6分5厘(年78%相当)の約定は、そのことのみをもって直ちに公序良俗に反して無効であるとは認められない。 第1 事案の概要:債権者と債務者(上告人)との間で、金銭債務の不履行が生じた場合の損害金について「月6分5厘」とする約定がなされた。上告人は、当該利率が著しく高額であること、および当該…