判旨
商事貸借における月1割(年120%)の遅延損害金の約定は、当時の一般経済界の実情に照らし、特段の事情がない限り公序良俗に反しない。
問題の所在(論点)
商事貸借において合意された「月1割」という高率の遅延損害金の約定が、民法90条の公序良俗に反して無効となるか。
規範
金銭消費貸借契約における遅延損害金の約定が公序良俗(民法90条)に反し無効となるか否かは、当時の一般経済界の実情を基準に判断すべきであり、当該利率が直ちに暴利として公序良俗に違反すると断じることはできない。特別の事情がない限り、当時の経済状況に照らして合理的な範囲内であれば有効である。
重要事実
被上告人は、上告人A1に対し、A2を連帯保証人として、昭和25年1月に3万5000円、同年2月に5万円を貸し付けた。弁済期はいずれも同年3月25日とし、利息および遅滞の場合の損害金の割合を「月1割」とする約定がなされた。この貸付金はA1が営む鉄製品製造販売業の営業資金として供されたものであり、商事債務に該当する事案であった。
あてはめ
本件の遅延損害金の約定(月1割)は、昭和25年当時の一般経済界の実情に照らして検討されるべきである。本件貸付けは営業資金としての商事貸借であり、旧利息制限法5条の適用もない事案である。当時の経済実態を考慮すると、月1割程度の損害金の約定は、直ちに公序良俗に反するとまでは認められない。また、当該利率を無効とするような「特別の事情」についても、上告人側から具体的な主張・立証がなされていない。したがって、本件約定を無効とする理由はない。
結論
月1割の遅延損害金の約定は、当時の経済実情に照らし公序良俗に反せず有効である。上告人は元本に加え、約定通りの利息および遅延損害金を支払う義務を負う。
実務上の射程
利息制限法が改正・整備された現代においては、同法所定の制限(同法4条1項等)を超える遅延損害金は当然に無効となるため、本判例を直接適用して高率の損害金を有効と主張することは困難である。もっとも、公序良俗違反の判断において「当時の経済的実情」や「具体的合理性」を考慮するという枠組み自体は、法規制の枠外にある事案や評価の局面で参照され得る。
事件番号: 昭和28(オ)963 / 裁判年月日: 昭和30年4月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】金銭貸借において、旧利息制限法の制限を超える遅延損害金の約定であっても、営業資金の貸付けであり、かつ公序良俗に反すると認められる特段の事情がない限り、民法90条に違反して無効とはならない。 第1 事案の概要:被上告人(債権者)は、上告人A1(債務者)に対し、昭和24年6月13日に10万円を貸し付け…