昭和二五年二月二〇日に元金を三万円、弁済期を同年五月二五日、支払うべき利息ならびに損害金の割合を月一割とする約定で、商人の営業資金に供するために成立した消費貸借は、特別の事情のない限り、公序良俗に反し無効であるということはできない。
月一割の利息および損害金を支払う旨の消費貸借は公序良俗に反するか
民法587条,民法70条,旧利息制限法5条
判旨
金銭貸借における月一割(年120%)の遅延損害金の約定は、当時の一般経済界の実情に照らし、特段の事情がない限り公序良俗に反して無効とはいえない。
問題の所在(論点)
旧利息制限法の適用がない商事貸借において、月一割(年120%)という高率の遅延損害金の約定が、民法90条の公序良俗に反し無効となるか。
規範
金銭貸借契約における利息および遅延損害金の約定が、民法90条の公序良俗に反して無効となるか否かは、当時の一般経済界の実情(物価、金利水準、通貨価値の変動等)を基準に判断される。当該約定が当時の社会通念上、著しく不相当な高利である等の特別の事情がない限り、直ちに公序良俗違反とは認められない。
重要事実
債権者(被上告人)は、債務者(上告人A1)に対し、鍛冶屋業の営業資金として計5万円を貸し付けた。その際、返済期限を約1ヶ月後とし、利息および遅延損害金の割合を「月一割(年120%)」とする約定を交わした。本件貸付は商行為に該当し、当時の旧利息制限法5条(制限を超える利息の効力)の適用がない事案であった。債務者側は、この高率な損害金の約定が公序良俗に反し無効であると主張した。
あてはめ
本件における月一割の遅延損害金の約定について検討するに、昭和25年当時の一般経済界の実情(激しいインフレ等の経済混乱期)に照らせば、この程度の割合は直ちに公序良俗に反するものとは認め難い。また、本件においては、この約定を特に不当とするような「特別の事情」について債務者側から何ら主張・立証がなされていない。したがって、当時の社会情勢に照らして許容しうる範囲内であり、公序良俗違反による無効は認められない。
結論
月一割の遅延損害金の約定は公序良俗に反せず有効であり、債務者は約定通りの損害金を支払う義務を負う。
実務上の射程
利息制限法等の強行法規の適用がない場面(当時の商事貸借等)における、民法90条の適用の限界を示したもの。現代では利息制限法が厳格に適用されるため、同法の制限を超える約定はそれ自体で無効となるが、公序良俗の判断において「当時の経済実情」という客観的指標を重視する姿勢は、公序良俗一般の判断枠組みとして参考になる。
事件番号: 昭和28(オ)1230 / 裁判年月日: 昭和30年6月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】損害金月6分5厘(年78%相当)の約定は、そのことのみをもって直ちに公序良俗に反して無効であるとは認められない。 第1 事案の概要:債権者と債務者(上告人)との間で、金銭債務の不履行が生じた場合の損害金について「月6分5厘」とする約定がなされた。上告人は、当該利率が著しく高額であること、および当該…