判旨
金銭債務の不履行に伴う損害賠償額の予定があるというためには、利息の約定があることのみでは足りず、遅延損害金についても別途特約が存在するか、あるいは損害賠償額の予定と認めるべき事実を要する。
問題の所在(論点)
金銭貸借において利息の約定がなされている場合に、特段の審理を経ることなく、当然にその利率に基づき損害賠償額の予定がなされたものと認定できるか(民法419条1項ただし書の適用の前提となる合意の存否)。
規範
金銭貸借において利息の約定がある場合であっても、当然にその利率が期限後の損害賠償額の予定(民法420条、419条)として適用されるわけではない。遅延損害金について利息と同率の賠償額の予定がなされたと認めるには、当事者間において当該利率を遅延損害金にも適用する旨の合意が別途存在することを要する。
重要事実
被上告人(債権者)は、訴外Dに対し、月利率5分の約定で金30万円を貸し付け、上告人(連帯保証人)がこれを連帯保証した。原審は、貸金契約において利息の約定があった事実を認定したのみで、期限後の損害金についても利息と同じ利率とする旨の約定があったか否かを十分に審理しないまま、賠償額の予定があったものとして、利息制限法所定の制限利率(年3割または1割8分)による遅延損害金の支払いを命じた。
あてはめ
本件において、原審は貸金契約時に月利率5分の利息約定があった事実は適法に確定している。しかし、期限後の遅延損害金について利息と同率の約定がなされた事実については、判決文上その証跡が認められない。利息の約定の存在から直ちに遅延損害金の特約(賠償額の予定)の存在を推認することはできず、損害金の約定の存否について審理を尽くさずに賠償額の予定を認めた原審の判断には、理由不備および法令適用の誤りがあるといえる。
結論
利息の約定があることのみから当然に遅延損害金の特約を認定することはできず、原判決中、損害賠償の支払いを命じた部分は破棄を免れない。
実務上の射程
実務上、利息の約定と遅延損害金の約定は別個の合意である。答案上は、遅延損害金の請求において、利息制限法1条および4条の適用を検討する前提として、そもそも賠償額の予定(419条1項ただし書)としての合意が成立しているかを事実認定のレベルで厳格に区別する必要があることを示す際に有用である。
事件番号: 昭和30(オ)180 / 裁判年月日: 昭和31年11月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】利息制限法は金銭消費貸借上の債務のみを対象とするものであり、民法419条は金銭債務につき特約をもって法定利率を超える遅延損害金額を定めることを妨げない。 第1 事案の概要:上告人は、原審が認定した金銭債務の遅延損害金について、利息制限法の適用があること、および民法419条の規定により法定利率を超え…