判旨
長年にわたり郵便物の受領を異議なく他者に委ねていた等の事情がある場合、当該他者への郵便物の配達をもって、本人に対する交付があったものと認めるのが相当である。
問題の所在(論点)
行政処分の取消訴訟における出訴期間の起算点に関連し、本人以外の場所(D方)に書類が郵送された日をもって、本人に「交付」された日とみなすことができるか。
規範
郵便物の受領に関し、本人が特定の他者が代人として受領することを暗黙に認めていたと解される特段の事情がある場合には、当該他者への配達をもって、本人への「交付」があったものと解するのが相当である。
重要事実
上告人の住所は集落から離れた不便な場所にあり、昭和12年頃の移住以来、上告人宛の郵便物は書留や速達を含め、すべて集落内のD方に配達されていた。Dは自身の印鑑を用いてこれらを受領していたが、上告人は長年これに対して何ら異議を述べていなかった。本件裁決書も同様にD方に郵送された。
あてはめ
上告人の住所の地理的状況から郵便配達が著しく不便であったこと、移住以来10年以上にわたり、書留等の重要な郵便物を含めてDが代わって受領する慣行が定着していたこと、及び上告人がこれに異議を述べていなかった事実に照らせば、上告人はDが代人として受領することを暗黙に認めていたといえる。したがって、Dへの配達は上告人への交付と同視できる。
結論
D方に本件裁決書が郵送された日をもって、原告(上告人)に交付された日として出訴期間を算定すべきである。
実務上の射程
行政事件における出訴期間や、民事法上の意思表示の到達(民法97条1項)の判断において、受領権限の有無を「暗黙の承認」という実態から認定する際の基準となる。郵便の不達や遅延を争う事案において、長年の慣行や本人の不作為を根拠に到達を擬制する場面で活用できる。
事件番号: 昭和27(オ)404 / 裁判年月日: 昭和27年12月23日 / 結論: 破棄差戻
当選の効力に関する訴願裁決の要旨の告示が訴願人に対する裁決書交付前に行われた場合においても、訴願人が右裁決に対し訴を提起する場合の出訴期間は、右訴願人が裁決書の交付を受けた日から三〇日以内である。
事件番号: 昭和23(オ)86 / 裁判年月日: 昭和23年12月14日 / 結論: 棄却
上告人は本件訴願の申立人ではなく第三者であるから、地方自治法第六六條第三項によつて裁決書の交付を受けるべきものではない。從つて上告人が裁決に不服があるときは、同條第四項によつてその裁決の告示の日から三〇日以内に出訴しなければならない。
事件番号: 昭和28(オ)1286 / 裁判年月日: 昭和29年3月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙の投票において、特定の候補者の氏名が正確に記載されていない場合であっても、諸般の事情を考慮して当該候補者に対する投票であると合理的に認められるときは、これを有効投票と解すべきである。 第1 事案の概要:本件は選挙における投票の効力が争われた事案である。係争の投票6票について、特定の候補者Bの氏…
事件番号: 昭和31(オ)687 / 裁判年月日: 昭和31年10月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙会における決定の効力は、開票の際に存在した事実上の投票状況を基礎として判断されるべきであり、事実認定に疑義がある場合には、証拠により確定された事実に従う。 第1 事案の概要:本件では、選挙会における決定の効力が争われた。具体的には、係争の投票4票が開票の際に存在したか否かが争点となり、上告人は…
事件番号: 昭和27(オ)692 / 裁判年月日: 昭和28年3月20日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】帰属不明の無効投票が混入している場合、改正公職選挙法に基づき、各候補者の得票数から当該無効投票数を各候補者の得票数に応じて按分して差し引いた上で当選の効力を判断すべきである。 第1 事案の概要:昭和26年4月に実施された青森県北津軽郡D議会議員一般選挙において、投票中に25票の「潜在的無効投票(帰…