判旨
先行する仮処分命令と内容において抵触する後発の仮処分申請は、手続の安定および執行の矛盾を回避する観点から許されない。
問題の所在(論点)
先行する仮処分命令が存在する場合において、これと内容が抵触する後発の仮処分申請を行うことは認められるか。
規範
先行する仮処分命令によって形成された法的状態、あるいは執行の対象となっている物や権利につき、その内容と実質的に抵触・矛盾する内容の仮処分を重ねて発令することはできない。
重要事実
上告人は、既に発令されていた第一次仮処分命令が存在するにもかかわらず、その内容と抵触する内容を持つ第二次仮処分の発令を申請した。原審は、先行仮処分と抵触する仮処分は許されないとして、上告人の申請を棄却した。
あてはめ
本件における第二次仮処分の申請内容は、第一次仮処分命令と明白に抵触するものである。仮処分は暫定的な保全処分であるものの、既に有効な先行命令が存在する以上、これと矛盾する命令を重複して発することは、民事保全制度における執行の統一性を著しく害する。したがって、抵触性が認められる本件申請は不適法である。
結論
先行仮処分と内容において抵触する仮処分は許されない。したがって、本件上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
民事執行・保全法上の原則を確認した判例である。答案上は、仮処分の申立てが二重起訴の禁止や既判力の類推適用、あるいは保全の必要性の欠如といった文脈で論じられる際の根拠として機能する。特に同一目的物に対する矛盾した処分禁止仮処分などの場面で、後発申請の適格性を否定する論理として活用できる。
事件番号: 昭和30(テ)22 / 裁判年月日: 昭和31年7月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】仮処分に関する高等裁判所の終局判決に対する上告は、憲法違反を理由とする場合に限られ、実質的に単なる法令違反の主張にすぎない場合は適法な上告理由とは認められない。 第1 事案の概要:上告人は、仮処分に関する高等裁判所の終局判決に対し、憲法76条3項(裁判官の職権行使の独立)および憲法29条(財産権)…