判旨
同一の仮処分に対し、民訴法に基づく取消申立事件が係属している場合であっても、その以前に申し立てられた仮処分に対する異議を容認して仮処分を取り消すことは、二重起訴の禁止の趣旨に反しない。
問題の所在(論点)
同一の仮処分に対し、保全異議の申立てと保全取消しの申立てが並行して係属している場合、一方の審理において仮処分を取り消すことが二重起訴の禁止の趣旨に抵触するか。
規範
二重起訴の禁止(旧民訴法231条、現行民訴法142条)の趣旨は、判決の抵触の防止、被告の応訴の煩、および審理の重複による不経済の回避にある。しかし、仮処分に対する異議(保全異議)と取消申立(保全取消)は、制度上の趣旨や目的を異にするため、両者が並存し、一方が他方の判断に影響を及ぼしたとしても、当然に二重起訴の禁止に触れるものではない。
重要事実
本件では、ある仮処分命令に対し、債務者がまず仮処分異議の申立て(旧民訴法756条、744条)を行っていた。その後、同一の仮処分に対し、別に事情変更等に基づく取消申立事件(旧民訴法759条)も係属した。上告人は、取消申立事件が係属している以上、先行する異議申立てに基づく仮処分の取消しは二重起訴の禁止の趣旨(旧民訴法231条)に違反すると主張して争った。
あてはめ
仮処分に対する異議申立ては、仮処分命令自体の当否を再審査する手続である。これに対し、本件で並行していた取消申立ては、別の原因(事情変更等)に基づき仮処分の失効を求めるものである。両者は申立ての根拠や審理対象が異なる以上、異議申立てを容認して仮処分を取り消すことが、後から申し立てられた取消事件の存在によって妨げられる理由はない。したがって、旧民訴法231条の二重起訴禁止の趣旨には反しないと解される。
結論
仮処分取消申立事件が係属中であっても、先行する仮処分異議に基づき仮処分を取り消すことは適法であり、二重起訴の禁止には反しない。
実務上の射程
民事保全法上の保全異議(26条)と保全取消(37条〜39条)の関係についても同様に考えられる。保全手続において複数の不服申立手段が重複した場合でも、それぞれの制度目的が異なる限り、一方が他方を排斥する関係にはないことを示す射程を有する。
事件番号: 昭和24(オ)330 / 裁判年月日: 昭和26年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】仮処分決定に対する異議申立てにおいて、申立人が「特別の事情」に基づく取消しを求める意思を明確に示していない限り、単にその原因となるべき事情を言及したのみでは、裁判所は取消しの要否を判断する義務を負わない。 第1 事案の概要:被上告人(債権者)が上告人(債務者)に対し、不動産処分禁止の仮処分を執行し…
事件番号: 昭和28(オ)72 / 裁判年月日: 昭和29年12月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利濫用の成否について、原審が認定した事実に基づき、権利の濫用を認めるべきでないとした原判決の判断を正当として維持したものである。 第1 事案の概要:上告人は、相手方の行為が権利濫用に該当すると主張して上告したが、具体的な事案の内容や原因となった紛争の詳細は本判決文からは不明である。原審(二審)は…