判旨
裁判所は、証拠調べの結果のみならず、弁論の全趣旨をも斟酌して事実を認定することができる。したがって、特定の土地の占有という事実を、証拠によらず弁論の全趣旨のみから認定することも適法である。
問題の所在(論点)
証拠調べの結果に基づかず、弁論の全趣旨のみをもって、土地の占有という主要な事実を認定することができるか。
規範
裁判所は、判決を下すに際し、証拠調べの結果のみならず、口頭弁論の過程で現れた一切の資料(弁論の全趣旨)を斟酌して事実認定を行うことができる(民事訴訟法247条参照)。
重要事実
上告人らは、原審が特定の土地(20坪の部分)の占有という事実を、直接の証拠に基づかず「弁論の全趣旨」のみによって認定したことは違法であると主張して上告した。なお、具体的な事案の詳細は判決文からは不明である。
あてはめ
民事訴訟法上、裁判所は自由心証主義に基づき、証拠と弁論の全趣旨を総合して事実を認定する権限を有する。本件において、原審が20坪の土地の占有という事実を弁論の全趣旨に基づいて認定したことは、この心証形成の範囲内にある。証拠が存在しない場合であっても、弁論の全趣旨によって裁判官が確信を得たのであれば、それを基礎として事実を認定することは法の許容するところである。
結論
弁論の全趣旨によって事実を認定することは適法であり、原判決に違法はない。
実務上の射程
主要事実を弁論の全趣旨のみで認定できるかについては争いがあるが、本判例はこれを肯定した一例とされる。答案上は、証拠が乏しい場面において弁論の全趣旨(当事者の主張の態度や変遷、争点の絞られ方など)を補充的に用いる際の根拠となる。
事件番号: 昭和42(オ)1441 / 裁判年月日: 昭和43年6月6日 / 結論: 棄却
土地の不法占有を原因とする賃料額相当の損害金請求訴訟において、原告が右相当賃料額を一ケ月金一、〇九〇円と主張したのに対し、被告はいつたん右主張を認めたが、控訴審にいたつてこれを争い、その金額を一ケ月金一、〇八九円である旨主張する等判示のような事情が存在する場合には、右被告の主張の態度、変更後の陳述の内容その他本件に表わ…
事件番号: 昭和31(オ)336 / 裁判年月日: 昭和32年11月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が行った売買の合意に関する陳述が、弁論の全趣旨に照らして所有権移転を伴わない契約を意味すると解される場合には、自己の所有でないことを自白したものとは認められない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)の代理人が、第一審において「原告と訴外Dとの間で本件土地の売買約束が成立し、引渡期限は本件訴訟…
事件番号: 昭和36(オ)93 / 裁判年月日: 昭和38年10月3日 / 結論: 棄却
原裁判所の裁判が公正妥当を欠くものであるとしても、裁判所において裁判を受ける権利を奪われたものとはいえないから、右裁判が憲法第三二条に違反したとはいえない(昭和二二年(れ)第四八号同二三年五月二六日大法廷判決、刑集二巻五号五一一頁、昭和二三年(れ)第五一二号同二四年三月二三日大法廷判決、刑集三巻三号三五二頁参照)。
事件番号: 昭和26(オ)747 / 裁判年月日: 昭和28年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告審において、原判決の事実認定に沿わない独自の事実を前提として憲法違反を主張することは、上告の適法な理由とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、原判決が認定した事実とは異なる事実を想定し、その想定事実に基づいて憲法違反(違憲)を主張して上告を提起した。 第2 問題の所在(論点):原判決の事実…
事件番号: 昭和28(オ)230 / 裁判年月日: 昭和30年4月21日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】当事者が抗弁として主張していない事実(示談による土地使用権の存在)を裁判所が認定し、それを根拠に請求を棄却することは、弁論主義に違反し許されない。 第1 事案の概要:上告人(所有者)が被上告人らに対し、建物収去土地明渡を請求した。被上告人らは「賃借権譲渡の承諾を受けた」との抗弁を主張したが、原審は…