判旨
警察官が、大爆発の危険がある作業に際し、住民の安全を守るため適宜の措置をとるべき義務を怠った場合、その行為が切迫した勧告・注意等の非権力的な性質を有していても、国は損害賠償責任を負う。また、危険物の引継ぎにあたり必要な注意を怠り、爆発を招いた担当官の過失と損害との間には相当因果関係が認められる。
問題の所在(論点)
1. 警察官による勧告・注意といった非権力的な警察作用の不作為が、国の損害賠償責任の対象となるか。 2. 危険物の引渡し時における担当官の注意義務違反と、その後の爆発事故による損害との間に相当因果関係が認められるか。
規範
公務員による行政活動が、公権力の行使に当たらない非権力的作用(事実行為等)であっても、国家賠償法1条1項の「公権力の行使」に含まれるか否かについては、本判決は直接の言及を避けつつも、警察官の勧告・注意等の非権力的作用について国の損害賠償責任を肯定した。また、公務員の過失と損害との間に相当因果関係が認められるためには、当該過失が結果発生の直接的・間接的な原因となり、当時の状況下で結果発生が予測可能であれば足りる。
重要事実
占領下、二股トンネル内の火薬類を焼却処分する際、日本陸軍の担当責任者D少佐は、占領軍に火薬を引渡す際、危険性に関する必要な注意を怠り、占領軍に安易な焼却処分をなさせた。また、地元警察署長Eらは、爆発の危険がある状況下で、住民の生命・身体・財産を保護するために必要な適宜の措置(勧告や注意等)をとるべき義務があったにもかかわらず、これを怠った。その結果、大規模な爆発事故が発生し、住民に被害が生じた。
あてはめ
警察署長らの不作為について、本件は急迫の必要がある場合に認められる措置であり、切迫した勧告・注意としての性質を有する。これは公権力の行使たる警察作用そのものではないとしても、住民の安全を確保すべき職務上の注意義務に違反するものであり、国の損害賠償責任を肯定すべきである。また、D少佐の過失について、火薬の危険性を秘匿して引き渡したことが、占領軍による不適切な焼却作業に直結している以上、その後の大爆発という結果との間には相当因果関係が認められる。
結論
国は、D少佐および警察署長らの過失による本件事故の損害について、被害者に対し損害賠償義務を負う。本件上告は棄却される。
実務上の射程
国家賠償法1条1項の「公権力の行使」に非権力的な行政作用(事実行為)が含まれるかという論点において、本判決はこれを肯定する実務上の先例として機能する。また、作為義務(警察官の注意喚起義務)の発生根拠として、危険の切迫性や保護対象の重大性を考慮する枠組みを示しており、警察官の不作為による賠償責任を追及する際の有力な論拠となる。
事件番号: 昭和28(オ)1416 / 裁判年月日: 昭和30年11月25日 / 結論: 棄却
債務者の占有する動産を差し押えたところ、第三者から、右動産は自己の所有に属し、執行意義の訴を提起した旨の通告があつたにかかわらず、右事実の真否を調査せずに、競売手続を遂行したときは、債務者は第三者の権利侵害につき過失の責を免れることはできない。