判旨
建物所有を目的とする土地利用であっても、建物所有権が当初から地主に帰属し、借地権者が建物処分権を有しない合意がなされた場合には、借地法の適用を排除し得る。当事者が一方に不利な内容を承知で合意し、その背景に特段の事情があるならば、公序良俗にも反しない。
問題の所在(論点)
建物所有を目的とする土地利用において、建物所有権を地主に帰属させる合意がある場合に、借地法が適用され当該合意が無効となるか。また、一方に著しく不利な合意が公序良俗に反し無効となるか。
規範
建物所有を目的とする土地の賃貸借であっても、建築された建物の所有権が建築当初から地主に帰属し、借主が当該建物の処分権を有しないという合意がなされた場合には、借地法(現・借地借家法)の適用を受けない。また、一見して当事者の一方に著しく不利な契約内容であっても、当事者がその内容を任意に合意し、かつ相応の収益見込み等の合理的背景がある場合には、公序良俗(民法90条)に反して無効となることはない。
重要事実
訴外Dは、ビンゴゲーム遊戯場を経営するため、被上告人所有の土地を借りたいと申し出たが、被上告人は当初難色を示した。Dが強く懇請した結果、建物は建築当初から地主である被上告人の所有に帰属させ、Dは建物処分権を持たないという、被上告人に一方的に有利な内容の契約が成立した。Dは数ヶ月で建築費を回収し、相当の利益を上げられると予想してこの不利な条項に甘んじたが、実際の営業成績は振るわなかった。
あてはめ
Dは自らの事業計画に基づき、建築費を早期に回収できると見込んで、あえて自己に不利な条項を承諾して契約を締結している。このように当事者が任意の合意に基づき、かつ特定の目的(遊戯場経営)のために不利な条件を甘受したに過ぎない場合、借地法の強行規定によって当該合意を無効とすべき「借地人保護」の必要性は認められない。また、収益の見込み等の事情がある以上、契約内容が公序良俗に反するとも断定できない。
結論
本件契約は借地法を潜脱する無効なものとはいえず、公序良俗にも反しないため、有効である。
実務上の射程
借地法の適用を回避するための「所有権の帰属合意」の有効性を認めた事例である。もっとも、本件は一時的な遊戯場経営という特殊な事情(営業利益による投下資本回収の容易性)が考慮されており、通常の居住用建物や恒久的な事業用建物について同様の合意がなされた場合にまで、直ちに借地法の適用が否定されるわけではない点に注意を要する。
事件番号: 昭和32(オ)755 / 裁判年月日: 昭和34年11月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建築資金を提供して建物を建築させ、その所有権を他者に帰属させた上で、提供者が当該建物を賃借する旨の契約は、借地法の適用回避を目的とする等の特段の事情がない限り、直ちに同法に違反して無効となるものではない。 第1 事案の概要:上告人と被上告人の間で、上告人が被上告人に対して建物の建築資金を提供し、完…