判旨
控訴状において請求棄却を求め、原判決の事実認定を争う旨を記載したとしても、具体的な事実関係の陳述を伴わない限り、擬制自白を覆す「主張事実を争う陳述」には当たらない。
問題の所在(論点)
控訴状において請求棄却を求め、原判決の事実認定を争う旨を抽象的に記載することが、民事訴訟法上の「主張事実を争う陳述」(擬制自白の成立を阻害する陳述)に該当するか。
規範
相手方の主張事実を争う陳述とは、相手方主張の事実に対する具体的な反対陳述であることを要する。したがって、単に相手方の請求棄却を求め、あるいは控訴状を提出したという形式的な事情のみでは、主張事実を争ったものと認めることはできない。
重要事実
被告(上告人)は、第一審において適法な呼び出しを受けながら口頭弁論期日に出頭せず、答弁書等の準備書面も提出しなかったため、擬制自白(旧民訴法140条)に基づき敗訴判決を受けた。控訴審において上告人は、「第一審が抗弁を認容しなかったのは事実認定の誤りである」旨を控訴理由に記載した控訴状を提出したが、実際には第一審で抗弁を提出した事実はなかった。また、原審の口頭弁論期日においても具体的な事実上の主張を行わなかった。
あてはめ
上告人は、控訴状において「原審が抗弁を認容しなかった」旨の記載をしているが、実際には第一審において何ら抗弁を提出しておらず、当該記載は実体のない不正確なものに過ぎない。このように、相手方の主張事実に対する具体的な反論を伴わず、単に請求の棄却を求めたり、控訴を提起したりする行為は、訴訟手続上の形式的な申立てであって、個別の事実に対する否認や抗弁などの陳述には当たらない。したがって、上告人が相手方の主張事実を争ったものとは評価できない。
結論
控訴状の提出や抽象的な請求棄却の申立てのみでは、擬制自白の効果を覆すに足りる「事実を争う陳述」には該当せず、控訴を棄却した原判決は正当である。
実務上の射程
擬制自白(民訴法159条)の適用を免れるためには、単に「争う」という結論を述べるだけでなく、期日に出頭して具体的な事実関係について認否を明確にする必要があることを示している。答案上は、擬制自白の成否や、控訴審における新たな主張の要否を検討する際の判断基準として活用できる。
事件番号: 昭和36(オ)956 / 裁判年月日: 昭和37年2月20日 / 結論: 棄却
「控訴理由は追て提出する」と書いただけの控訴状を提出したまま、五回に及ぶ適式の呼出を受けながら、いずれも弁論期日に出頭しなかつた控訴人は、被控訴人提出の準備書面の記載内容を明らかに争わず自白したものとみなされる。